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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四七話 勇気の誓い
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れないんだぞ。何も為せず消えてしまうのならそれは夢と変わらないんじゃないか。」
「怖いの……ですね。」

「ああ、怖いよ。(おれ)自身では何一つ出来ないというのが堪らなく怖いよ。(おれ)(おれ)が何もできないというのが怖くて堪らない。」

 自分の事なのに自分ではどうしようもない、そんな歯がゆさからくる恐怖を告白する忠亮。
 何となくだが、その気持ちは理解できる。
 そして、不謹慎だがその心の中に隠された弱さを見せてくれたことが嬉しかった。

「忠亮さんは怖いんですね。」
「ああ、怖いよ。(おれ)は未だ残せていない。」

 此処まで来るのに既にあまりに多くのモノを対価にしてきた。ここで戦わない道を選んだ先を知っているから―――悔恨の海に沈む結末を許容なんて出来ない。

 きっと、きっと何時か滅びの運命を越えられる。遠回りかもしれないけど一歩一歩を踏みしめて進む先に―――明るい未来があると信じて歩んできた。
 遠い記憶にある、微かに残る優しく笑う君の顔、声、両手――――それならば地獄に落ちても鮮明に思い出せた。

 何度、消えようと―――それだけは決して消してしまう事なんて出来ない。
 そして、それを思い出にさせるわけには往かない。

 思い出になんか、変えてたまるか。
 いつかの夢に消えてしまった君を想って空を見上げるだけの日々――――あの絶望に閉ざされた日々、地獄というモノが存在するのならアレこそ正に地獄だ。

 だから、信じて待ち続けた。忘却の淵にあろうと、いつの日か巡り合うのを。
 そして出会えた。
 なら、失わないために此処に居続けるために如何するかは分かりやす過ぎるほどに明瞭だ。だから選んだ、是非が無かった。

 其処に後悔はない……だが、迫りくる死の可能性に、自分では足掻くことすら出来ないという事実が恐怖を齎す。


「じゃあ、小さいですけれど……私の勇気を忠亮さんにあげます。」
「唯依……?―――!」

 疑問に振り返ろうとした忠亮の頬を包む感触、そして唇に柔らかく暖かいものが触れる。
 それは渇いた大地が降りそそぐ雨のしずくを受けるときの、銀の鈴を鳴らすような接吻。

「えへへ……。」

 真っ白にフリーズしていた思考が再起動する、目の前には頬を仄かに紅潮させてはにかむ唯依の姿。
 ―――ああ、この笑顔をずっと見ていたい。死にたくない、この陽だまりから離れたくない。

「忠亮さんはきっと大丈夫……今まで何度も生き残ってきたんです。だからきっと大丈夫。成功します。それでも不安なら、何度でも私の勇気を忠亮さんにあげます。」
「ふっ……男冥利に尽きるな。」

 力強い凛とした瞳で(おれ)に言い聞かせる唯依。それが何処か眩しくて目を細めた。
 もう、
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