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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四七話 勇気の誓い
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もありますよ。」
「え、ほんとですか!?」

 唯依も唯依で目の色が変わる。女性にとってお肌のアンチエイジングは重要な問題なのだ。もっちり卵肌で嬉しくない女はいない。

「ええ、ですのでお二人ともごゆっくりお堪能くださいな。」

 二人して仲居に見送られながら部屋を後にするのだった。






 かこーん、と鹿威しのくぐもった音が響く。

「はぁ……生き返る。」

 乳白色の濁った液体に体を付ける唯依。ちょっと集めのお湯に手足の筋肉がほぐれてゆくのを感じる。

「それにしても奥様と旦那様……かぁ。」

 乳白色の湯面を見つめながら呟く。先ほど仲居に言われた事で嬉しさと恥ずかしさに緊張を混ぜ小茶にした奇妙な感情が胸を占めていた。

「私、本当にいい奥さんになれるかな……」

 お湯の温度だけではない理由で頬を紅潮させて呟く。
 自分だってそれなりに頑張ってはいると思う。だが、どうすればいいのか手探りだ。
 目下、その悩みに突き当たっている真っ最中だ。


「………忠亮さんの腕、震えてた。」

 先ほどの客室での抱擁、回された腕が震えていたのに気づいた。自分だけが気づけた。
 彼を癒してあげたい―――本当は彼と一緒に欧州へと渡り、結果がどうなろうとずっと支えていたい。

 だけど、それは叶わない。自らには為さねばならない大儀がある。
 ずっと一緒に居たい、けれども別れなければならない。

 そしてそれは、彼がこの試練を乗り越えた先に―――きっと必要になることだから。
 彼を信じて、その先にともに歩めるように今は別れなければならない。

 この旅行は、その為の心の整理をするためのモノ。


「何をすべきかは見えてるのに、何がしたいのかがよくわからない――――ううん、したいことは分ってる。でもどうすれば良いのかが分からない。なんでかな……」

 今まで、自らの責務以外のすべてを切り捨ててきた代償なのか。
 自分がいまやりたい事のために何を如何すればいいのかがさっぱりわからない。為すべきことだけをただ機械的にやってきただけ―――やりたい事、為すべきことこの二つが分離してしまうと篁唯依はとたん駄目になってしまう。

 今までは為すべきことの先に彼との関係があって、だから好きになろうとして―――意図したわけじゃなかったけど本当に好きになってしまった。
 だけど、為すべきこと―――義務が係わらないと途端に優柔不断だ。

「ああそっか……私、忠亮さんには怖いものなんて無いんだ。って勝手に決めつけてたんだ。」

 なぜ、生死を掛けた手術の前に彼が震えてたという当たり前の反応がここまで心を突くのか。と不意に疑念を抱き、その答えに気づく。

 彼は当たり前の一人の人間
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