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Three Roses
第十話 またしての崩御その十二

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「それもです」
「そうですね、しかし」
「それは、ですね」
「マイラ様には出来ないことです」
「信仰は政治に先立つ」
「何よりもです」
 無論政治よりもというのだ。
「そうした方なのです」
「だからですね」
「太子が申し上げられても」
「それが信仰にそぐわないのなら」
「首を縦に振られません」
 決してというのだ。
「そうなのです」
「私としては妃には視野を広く持ちです」
「マリー様達にもですか」
「はい、広くです」
「そのお心をですね」
「持って欲しいのですが」 
 政治的にその方がいいからというのが第一だ、だが太子はこうも言った。
「人としても」
「君主は寛容であれ」
「人自体がですね」
「締めるべきところは締めてですね」
「はい、寛容であるところはです」
「寛容ですね」
「そうある方がいいので」
 だからこそというのだ。
「妃にもと思いますが」
「では何度も」
「機会を見て言いましょう、ですが」
「私は、ですか」
 司教は太子が自分の目を見てきたのを見て彼が今言いたいことを察した。そのうえで極めて冷静に応じたのだ。
「そのことについてどう思うか」
「はい、妃の教育係として」
「私は確かに神の僕であり」
 司教はここでは嘘や隠しごとは後々厄介なことになる、太子から不興を被りそれがそうしたものの種になると思い隠さず言うことにした。
 それでだ、こう言ったのだ。
「異端審問についてもです」
「この国に積極的に入れてですね」
「新教徒達にもあたるべきだと考えています」
「徹底してですね」
「旧教に戻すべきだと考えていますが」
「それでもですか」
「マイラ様がこの国の主になられ」
 そしてというのだ。
「その座にこれ以上ないまでに素晴らしい方になられるのなら」
「私が妃に言ってもですね」
「私は何も言いません」
 これが司教の返事だった。
「それがマイラ様の為になりますので」
「だからですか」
「はい」
 それ故にというのだ。
「私は何も申し上げません」
「左様ですか」
「太子の思われるままに」
 ここでは恭しく言った司教だった。
「その様に」
「それでは」 
 太子も応えた、そしてだった。
 太子は彼の動きをすることにした、司教はその太子と協力することに決めて彼もまた動いていた。同じ旧教の者であるが違うところがあるにしてもだ。手は結びそのうえでマイラの為に動いていた。


第十話   完


                    2016・5・22
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