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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十三話 英雄である事とは……
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わないだろう。イゼルローン要塞で三百万人殺された、だからシャンタウ星域で一千万人殺した。

殺されたから殺した、自分がしたことだ、それなのにその血生臭さに心が凍りそうな気がする。それでも俺は前へ進まなければならない。流された血を無駄にしないためにも進まなければならない。分かってはいる、だが俺に出来るだろうか……。

明日、勅令が発布される。帝国は混乱するだろう、帝国だけではない、フェザーンも同盟も混乱するに違いない。そしてその混乱の中から新しい帝国が誕生する。だがその新しい帝国のために流れる血はさらに増え続けるだろう……。



帝国暦 487年10月14日   オーディン 宇宙艦隊司令部 ウルリッヒ・ケスラー



司令長官室は未だ灯りが点いていた。時刻はもう二十一時を過ぎている。部屋に入ると司令長官が一人で机に座っている。私が部屋に入ったのに気付いたのだろう、何かを机にしまうと視線をこちらに向けてきた。

「ケスラー提督、どうしました、こんな時間に?」
「いえ、灯りが見えたので気になったのです。少し御時間を頂いてもよろしいですか」
元帥は私の言葉に軽く頷いた。そしてソファーに座るように促す。

私が元帥の言葉に従いソファーに座ると元帥も席を立ってソファーに腰を降ろした。それを待って、元帥に話しかけた。
「元帥、いよいよ明日になりました」

私の言葉に元帥は驚くことなく頷き言葉を発した。
「陛下から聞いているのですね?」
「はい」

明日、勅令が発布される。帝国で改革が始まるのだ、いや革命といって良いかもしれない。皇帝と平民による革命、歴史上初のことに違いない。

「元帥、一つお聞きしたい事があるのですが」
「何でしょう」
「いつから改革を考えていたのです?」

元帥は私の質問に少し黙っていたが、呟くように小さな声で答えた。
「……両親を殺された時からです」

やはりそうなのか……。元帥の言葉にそう思った。元帥は当時十二歳だったはずだ、普通なら有り得ない、しかし元帥は改革を考えた。そして士官学校に入った、帝国を変えるために。

「ケスラー提督、勘違いしないでくださいよ。私は自分の手で改革をしようとは思っていなかったんです」
「?」

「多分、誰かが改革を行なう。だからその手伝いが出来れば良い、そう思ったんです。それがどういうわけか、私が改革の旗振りをしている」
元帥は困ったような表情で話した。

本当だろうか? 困惑したような元帥の表情から見ると真実のように見える。思わず可笑しくなった。笑いを堪えながら元帥に忠告する。

「閣下、余りその事は仰らないほうが宜しいでしょう」
「何故です?」
不思議そうな表情で元帥は問いかけてきた。この人は妙に鋭いかと思えば不思議なほど
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