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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十三話 英雄である事とは……
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帝国を貴族達の国から平民達の国にしようとしている。違うだろうか?」
「……トリューニヒト」
レベロ委員長が話しかけたが、トリューニヒト議長はそれに構わず言葉を続けた。
「もしそうなら帝国は民主主義こそ実現されていないが、一部の特権階級が支配し搾取する国ではなくなる。何のために帝国と戦うのか、我々はもう一度考える必要があるのかもしれない」
自由惑星同盟の存在意義は二つある。一つは反ルドルフ、もう一つは民主主義の護持。帝国で改革が行なわれるのであれば、帝国がルドルフ的なものを捨て去るのであれば、同盟の存在意義は民主主義の護持だけになるだろう……。
ヴァレンシュタイン元帥は帝国をどのように変えるのだろう。今回の改革はあくまで門閥貴族対策なのだろうか? それとも別な意図が有るのか?それによってはトリューニヒト議長の言うように我々は何のために戦うのか、もう一度問い直す必要が有るだろう……。
帝国暦 487年10月14日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
執務机の引き出しの中から一枚の写真を取り出した。両親とともに写る俺の姿がある。いつ撮ったのだろう、三歳ぐらいだろうか、残念な事に俺には覚えが無い。
父に抱かれている俺は、母のほうに手を伸ばしている。母は笑いながら俺の手を握ろうとしている。父は俺を片手に抱きながらもう一方の手で母を抱き寄せている。父も母も未だ若い、幸せな家族の写真だ。
コンラート・ヴァレンシュタイン、ヘレーネ・ヴァレンシュタイン、俺にとっては二度目の両親だった。この世界で最初に俺を愛してくれた二人。この二人の子供に生まれた俺は幸運だった。もっとひどい両親の元に生まれる事も有り得たのだから。
この二人に感謝している。この二人の息子に生まれたことに感謝している。俺はこの二人が居てくれれば他には何もいらなかった。ただ傍に居てくれればよかった。それほど贅沢な望みだったとは思わない。だがそれすら叶えられなかった。
目の前にある写真を見ながら、俺はようやくここまで来たと思った。十年前、カストロプ公に両親を殺された。そしてあの日ラインハルトを助け門閥貴族達に復讐すると誓った。
ラインハルトを助けるつもりだった。それなのに気がつけば俺自身が頂点に立っている。妙な事になった、門閥貴族の討伐は俺が総司令官として行なう事になっている。どうしてこうなったのか……。
今思えばあの日、軍人を目指したときから歴史は変わったのかもしれない。もし歴史を変えることになると分かっていたら軍人になるのを止めただろうか? こんなにも苦しい思いをすると分かっていたらどうしただろう?
自分でも分かっている事がある。俺は英雄なんかじゃないって事だ。英雄なら一千万人殺してもなんとも思
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