第30話
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は自慢の”姉”で……幼いながらも憧れの存在だったんだ。
当然だけど……そんな女性を、周りの男たちが放っておくわけはなくて。随分モテていたけど、しっかりとしていた人だったから僕もちょっと安心だったんだ。―――”彼”が現れるまでは。”彼”は―――帝都庁に勤める父さんの部下にあたる青年だった。といっても、平民ではなくて由緒正しい貴族…………それも伯爵家の跡継ぎという、正真正銘のサラブレッドだった。ただ、貴族にありがちな傲慢さや尊大さは欠片もなくて……僕も会ったことはあるけど……誠実そのものと言った人柄だった。
そんな彼が、父に紹介される形で姉さんと知り合って……二人はお互い惹かれあって身分を超えた恋人同士になった。……正直、子供心に悔しくて仕方なかったよ。でも僕の目から見ても彼と姉さんは本当にお似合いで……姉さんが幸せそうだったから仕方なく諦めるしかなかったな。そして、父さんが仲人に立つ形で二人は婚約して……それが―――終わりの始まりだった。
相手の実家―――伯爵家が露骨に潰しにかかってきたんだ。どうやら”四大名門”の一つ、カイエン公爵家との縁談が急に持ち上がったらしくてね……平民の娘を娶るなどとんでもないと騒ぎ始めたんだ。父さんが帝都庁の要職だったから露骨な手こそ打ってこなかったが……ありとあらゆる嫌がらせや脅しが姉さんに対して密かに加えられた。愛する人を困らせたくなかったのか、父の立場を慮ったのか……姉さんは結局、一言も相談せず、ただひたすら耐え続けた挙句――――河に身を投げて自らの命を絶った。
僕達父子が経緯を知ったのは全てが終わり、投身自殺をした姉さんの遺書が見つかった後だった。どうやら”彼”は最後の最後で姉さんを手酷く裏切ったらしい。『わ、私は彼女に言ったんだ!”愛妾”として大切にするからどうか我慢してくれと!なのにどうして命を絶つ!?』
その後……父さんはそれまで以上に実績を上げた。そして、盟友であるオズボーン宰相と協力する形で帝都庁の貴族派を押し退けて…………4年前に帝都庁長官―――つまり帝都知事に任命された。これが、レーグニッツ家の事情さ。」
「……そんな事が……」
「だから”貴族”が嫌いになったの……?」
マキアスの過去を聞き終えたエリオットは悲痛そうな表情をし、フィーは尋ねた。
「……ああ。僕は……姉さんを死なせた”敵”を求めずにはいられなかった。相手の男に、伯爵家、横槍を入れて来た公爵家……しまいには貴族の全て……貴族の文化や制度すら敵と思った。そして……彼らに勝てるだけの力を必死になって追い求めてきたんだ。」
「「……………………」」
マキアスの話を聞いたリィンとラウラはそれぞれ重々しい様子を纏って黙り
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