第二十話 小さくなる身体その十三
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「誰にでもあるけれど」
「はい、誰かがいなくなるって思うと」
「怖いんだね」
「お父さんとお母さんのことがあって」
「そうだね、人はね」
「誰でもなんですね」
「大なり小なりトラウマがあるんだ」
例外なく、というのだ。人間ならば。
「それに打ち勝つことは難しいよ」
「そうですか」
「勝てない様なトラウマもあるよ」
岡島は言いながら無意識のうちに俯きかけた。
しかしその気持ちを抑えてだ、優花にさらに話した。
「けれどトラウマに向き合うこともね」
「大事なんですね」
「逃げるしかない様なものがあるけれど」
それでもというのだ。
「向かい合わないといけない時もあるよ」
「トラウマと」
「そうした時もね、ただ」
「逃げるしかないみたいなのもあるんですね」
「そんなトラウマは逃げたらいいんだ」
向かい合うよりもというのだ。
「忘れたり思い出さない様に努力してね」
「逃げたら駄目っていうのは」
「何でもじゃないよ」
逃げてはいけないというケース、それはというのだ。
「目の前に猛獣がいて向かい合うかい?」
「それは」
「そんなことをしたらね」
「食べられますよね」
「無茶苦茶な暴力を振るう親や教師から逃げなかったら」
所謂DVや校内暴力の話もした。
「下手をすれば死ぬよ」
「自分の身を守る為にですか」
「逃げることも大事だよ」
「死んだら元も子もないからですね」
「そう、余計に深刻なトラウマを持つ場合もあるから」
暴力はただ身体を傷つけるだけではない、心も傷つけるのだ。そうしたことを平気で行える親や教師こそが人類の恥だ。
「逃げないといけないよ」
「そうした時は」
「逃げないなら馬鹿だよ」
岡島はこうも言った。
「逃げられる状況でね」
「逃げられない子を見たら」
「守ることが人間の務めだよ」
「部活でもですね」
「そんなことをする教師や先輩がいる部活はどんな素晴らしいことをしている部活でも」
心身を鍛えるものであってもというのだ。
「いていいことはないよ」
「そうなるんですね」
「現役のヤクザがお坊さんだったら」
極端なケースもだ、岡島は言った。
「教わりたいかな」
「いえ、それは」
「そうした人には近寄らないことだよ」
岡島は強い声で優花に言った。
「さもないとね」
「本当にですね」
「そう、取り返しがつかないことになるからね」
このことを強く言うのだった。
「怪我をしてから、トラウマになってからじゃ遅いからね」
「暴力を受けてですね」
「そうした相手からは逃げるんだ」
「状況からもですね」
「そう、いいことはないから」
それこそ何一つとしてというのだ。
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