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真田十勇士
巻ノ五十三 九州のことその八

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「しかし」
「うむ、その他の領地はな」
「召し上げられますか」
「それは島津殿と同じじゃ」
 九州統一を果たしたうえで秀吉に従おうとしたこの家と、というのだ。
「天下に大き過ぎる大名はあってはならぬ」
「天下の維持の為には」
「力は一つに集まってこそ治まるな」
「はい、それが多くなりますと」
「その分乱れる要素となる」
「天下に二日はいらぬ」
 幸村も言った。
「そういうことですな」
「そうじゃ、天下に二日はいらぬからな」
「力の強過ぎる大名はいらぬ」
「だからな」
「北条殿も」
「その領地は大きく召し上げられる」
 北条家のそれはというのだ。
「そしてな」
「そのうえで、ですな」
「天下の中に組み込まれる」
「そうなりますか」
「しかしじゃ」
「北条殿は、ですな」
「それに従われるかというと」
「そうなりませぬか」
「そもそも東国と西国は違う」
 昌幸はこのこともだ。幸村に言った。
「そうじゃな」
「はい、西国は箱根から西です」
「そちらまでは誰が治めておった」
 しかとした目でだ、昌幸は幸村に問うた。
「一体」
「公方様、幕府にです」
「そして管領殿であったな」
「そうした方々が治められていました」
 鎌倉幕府があった頃の話だ、実は幕府は将軍は西国を主に治め天下全体となるとそこまでは実は至っていなかったのだ。
「西国探題、九州探題も用意されていましたが」
「それでもな」
「西国は実質的には」
「公方様であったな」
「はい、そして」
「東国はじゃ」
 その地はというと。
「関東公方様にな」
「そして関東管領ですな」
「そうした方々が治められていたな」
「奥州探題、羽州探題と用意され」
「そしてな」 
「東国は東国でしたな」
「昔からな」
 先の幕府の前にもというのだ。
「鎌倉幕府、そしてな」
「その前も」
「かつては蝦夷の地であった」
「東国は独特ですな」
「西国とは違う」
「それ故に」
「北条殿は東国、特に関東の覇を目指しておられる」
 今もというのだ。
「だからな」
「関白様にも」
「従われぬ」
「西国にはですな」
「そうお考えであろう、だからな」
「何としてもですか」
「戦は避けられぬ」
 北条家が秀吉に従わない、そして秀吉もそれを認めない、そうなればそうなることも当然だというのである。
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