53.辺獄・衣鉢継界
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り注いで容赦なく黒竜の背を抉った。
『グゥゥゥゥウウウギャアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?!?!?』
「えげつねー………しかもユグーもユグーで氷の加護なしにあの威力かよ。あいつ『俺自身が隕石になることだ』とか言い出さねぇだろうな……時にオーネスト、お前もしかしてユグーが天井にいたの……」
「お膳立てすれば落ちてくるだろうと知ってて斬ったが?」
「だよねー♪」
ここまで、すべてはオーネストの手のひらの内。予定調和のつまらない流れだ。そして――黒竜がまだこの程度で終わる筈がないというオーネストの予感もまた、ある意味ではオーネストの予測通りだった。
黒竜の放つ圧倒的な滅気が、揺らぐどころが更に高まっている。肌で感じるその威圧が全身を逆撫でするように纏わりつき、絡まり、呼吸する喉を絞める程に重く全身を締め付ける。
「さて………構えろアズ。次のあいつは、恐らく更に強靭になるぞ」
「第三形態かぁ………もはやラスボスだな。段々と驚かなくなってきた自分がいるぞ」
「――なら、せいぜい次の接敵で度肝を抜かないよう気を付けろ。消し飛ばされたら俺も助けられん」
「………お前がそこまで言うってんなら、次に出てくるのは俺の人生史上最強最悪の敵ってわけだ」
「もしかすれば、俺にとっても………な」
灼熱と氷雪のぶつかり合いで常温に戻りつつある空間の中で、アズの額から汗がつつ、と伝って乾いた地面に落ちた。それは単なる体温調節の為の汗か、それとも――4人の目の前で溶岩のようにぐずぐずに崩れ落ちながらも決して四散することはない黒竜『だったもの』のせいか。
ユグーの拳で体を貫かれた蒼炎の黒竜は、その場で音もなくぐずぐずに溶け落ち始めていた。まるで肉や骨格など最初からなかったかのように――いや、エネルギー生命体と化していた事を考えれば骨格はすでになくなっていたのかもしれないが、あの形状は黒竜の魂と鱗によって辛うじて形状を保っていたのかも知れない。
翼が、腕が、顎が、黒竜を黒竜と認識させていたパーツが崩壊してゆく。
それは、黒竜という存在そのものが崩壊することを意味する。その筈だ。
なのに――。
リージュは少しずつ内より湧き上がる魔力量が落ち着き始めるのを自覚しながら、胸中に渦巻く疑念を証明するように無数の氷柱を虚空に顕現させ、マグマの塊になった黒竜に投擲する。魔物が受ければ触れた瞬間に全身が凍結し、氷の重量で粉々に粉砕されるであろう獄氷達は、溶岩と接触した瞬間に液体となって四散した。
「奴を覆う熱が更に高まっている……おのれ、魔力放出も限界か」
過剰なまでの魔力を放出することで空中を飛行していたリージュも、ポーションの効力が収まってきたことで徐々に放出量が通常に戻り始めたた
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