53.辺獄・衣鉢継界
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って以降、戦いの雰囲気や戦法、そして黒竜そのものの姿がガラリと変質した事を加味し、アズなりに分析を重ねていたのだ。
首ばかりを狙っていたのは質量のことを加味した上で決定打を打てる方法が来た時の為の伏札の一つ。もし黒竜への対抗手段が出来上がったら、鱗のない部分が役に立つだろうという推測から作り出したものだった。
そして、その動きの拘束が……致命的な隙になった。
「――どうした化け物。膝の上と下がおさらばしているぞ?」
それに気づいたとき、既にオーネストは剣を抜いていて。
それに気づいたとき、既にオーネストの攻撃は終了していて。
それに気づいたとき、黒竜は初めて自分の後ろ足が音もなく寸断されていることに気が付いた。
『ゴ………ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?』
常に破壊力を求め暴力的に振るわれるオーネストの刃は、本当はこの世界のどの剣士より美しい斬撃を放つことが出来る。なにより早く、なにより無駄のない剣術の極地の一つ――居合抜刀術。それは無駄を嫌うオーネストが辿り着いて当然の、そして『本気』の業。
鎖に引かれ、足を冷気の刃で寸断され、黒竜の動きが再び完全な隙を晒す。
その隙を――『吹き飛ばされて天井に張り付いていたユグー』もまた、見逃す気はなかった。
空気は高熱になればなるほど上方へ行く。その灼熱の中でユグーはずっと待っていた。黒竜にまともに攻撃を叩き込める、極限の隙を。相手に喰らわされた殺意に応答するに相応しいだけの攻撃を繰り出す準備が整ったと感じた瞬間、ユグーは『天井に突き刺していた足を曲げて全力で蹴りだした』。
天井を蹴り砕いた反作用、重力加速度、位置、そして決定打を与える為にアズに受け取ったナックルに全身全霊を込め、ユグーは笑いながら黒竜の背中へ飛来した。
「待たせたな、黒竜!!貴様ノ至高にぶつけるに相応しイ、俺の至高ヲ受ケ取レ………ヴァオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
それは完璧なタイミングで振り下ろされ――魂を捉える耐火籠手に接触した黒竜の背中にクレーターのようなへこみが形成されるほどの威力で衝撃が大地を穿った。
遅れて、ガウウウウウウウンッ!!!と大気が裂けるような悲鳴を上げ、攻撃の余波で黒竜の翼が中ほどからバキバキにへし折れた。ユグーの拳はそれだけで止まらず、とうとう灼熱の蒼炎を貫通して地面に叩きつけられた。黒竜に荒らされた大地が更に地響きを立てて捲れ上がり、その場をユグーが離脱した直後に黒竜がその場に轟音を立てて倒れこんだ。
「わたしからも受け取ってほしいものがあるのだ。嫌とは言うまいな?」
透き通った、酷氷なる声。
間髪入れず、リージュが射出した氷柱が無数に降
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