53.辺獄・衣鉢継界
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か!!」
(もうリージュの切り替えの早さにツッコミすらしなくなったか)
「アキくん?アキくんでも大丈夫だと思うんだけど……ダメだった?」
「受け取っておく」
淡白な返事をしたオーネストの剣にもリージュの加護――熱を奪うことを本質とした氷雪の力が宿る。いや、正確にはこれはかけられた本人が武器だと感じるすべてに適応されるため、おそらく脚や拳にも場合によっては宿るのだろう。
オーネストにとって一つ幸運だったのは、この加護が攻撃的なものだったこと。精霊的に言えばオーネストの本質はどこまでも攻撃であり、防御の加護や力は根本的に相性が悪くて効果が出にくい。もしもこの冷気の本質が「熱気から身を護る」というものであったならばオーネストは絶対に拒絶していただろう。
……冷気の本質を理解した瞬間にこの性質とオーネストの相性を考えて性質を気合で攻撃的に変形させたリージュは、実は誰よりも運命を塗り替える力が強いのかもしれない。
ともかく灼熱の黒竜への対抗手段を手に入れた二人は同時に仕掛けた。
「どぉぉぉ……りゃあああああああああああッ!!!」
何重にも束ねた鎖の鞭を形成したアズが微塵の躊躇なく鎖を横薙ぎに振り回す。ガジャラララララララララッ!!と金属音をまき散らして振るわれた鎖だが、初期の黒竜にこれは通用しなかった。理由は簡単で、この恐ろしい強度と威力を誇る鎖を黒竜の単純な戦闘能力が上回っていたからだ。
当然、黒竜はこれを破壊しようと首を振り回し、触れるもの全てを焼き尽くす熱量を内包した熱波と共にブレスを吐き出した。溶岩の河口から噴き出すような迫力で、光学兵器のようなブレスが発射される。
直後、その炎を易々と突破した鎖が黒竜の首に巻き付いた。
『ッ!?!?!?』
「へっ………その炎、確かに相当ヤバい力だ。だけど、肉体まで炎に変えたのは一長一短だったのかもな」
鎖は、アズが散々『徹魂弾』で削った鱗の薄い部分に絡みついていた。そのことに気付いた黒竜は激しくもがいて鎖を引き千切ろうとするが、最初に足をつかんで転倒させた鎖の束より細いはずの鎖がまったく千切れない。それどころか鎖が激しく水を蒸発させるような音を立てて青白い首に食い込んでいく。
『死望忌願』と共に鎖を掴んで踏ん張るアズは不敵な笑みを浮かべ、さらに力を込めて鎖を引く。
「お前の肉体はエネルギー体になっている。つまり、外の鱗を除けば現在のお前の体には物理的な質量が極端に少なくなっている。さっきから熱波ばっかり飛ばして誤魔化してるけど、その姿になる前の重量級パワー、今はそれほど使えないんじゃないか?」
『グルルルルルルルルッ!?』
アズは確かにオーネストの為に時間稼ぎをしていたが、その間何も考えずに戦っていた訳ではない。黒竜が蒼炎を纏
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