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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
53.辺獄・衣鉢継界
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とか逞しいとか意志が強いとか、そういった意味での強さを言っている。あれだけ強力な魔法を使い、更に上位の力に踏み込むには恐ろしいほどの苦境を潜り抜けなけれないけない。そこに至るには尋常な覚悟では辿り着くことが出来ない。
 オーネストの力と化学反応的なブーストを起こしていると言えど、それをああも御するに足る因果をかき集められるのは、運命に抗う者の証左だとアズは考える。

 アズの記憶にある限り、アズがアズになる前の世界にこのような「強さ」を持つ人間は碌にいなかった。自分自身も勿論そうだ。何故ならばあの世界は緩慢で変化を望まない世界だったから、戦いが求められていなかった。むしろその強さを持つ者は忌避され、疎外されていたといっても過言ではない。

 同級生に一人、虐められている女の子がいた。男子全体はそれに関わりが薄かったためにその事を碌に知らなかったけど、様子がおかしい彼女に凡人なりの気配りをした当時の彼はそれを偶然知ってしまった。だからといって、現状を彼に変えられる訳ではなかった。
 出来るのは精々、彼女の心が本当に折れてしまわないように時々気に掛ける程度。彼女はそれでも慕ってくれたが、対症療法的で根治に至らない現状はいつまで経っても変わらなかった。彼女にはおそらく、現状の学校、家庭、人間関係に至るまで全ての環境に反逆するだけの力も勇気もなかったのだろう。恥ずべきことではない。それがあちらでは当たり前だっただけだ。

(正反対の世界、か………いいや、考えてる場合でもないか)

 すぐさま意識を戦いに切り替えたアズの頭上から、リージュの声がかかる。

「妖怪鎖コート!!鎖を出せ!!」
「変な妖怪に仕立て上げないでほしいが諒解っとぉ!!」

 『断罪之鎌(ネフェシュガズラ)』ではなく『選定之鎖(ベヒガーレトゥカー)』を携えて先程リージュが放った氷を踏み越えて更に加速する。指示に対して迷いは抱かない。オーネストが信頼するリージュを疑う理由はないし、彼女とて恐らくそれは一緒なのだろう。仲良しでなくとも、オーネストという大きなバイパスでゴースト・ファミリアは繋がれている。
 だから、鎖が今まで感じたことのない冷気をまとって輝いた時も、アズは驚きこそすれ戸惑いはしなかった。纏わりつくのは異質な魔力。以前に試した際はこの非物質的物質である鎖が魔法による干渉を受けることはなかったが、彼女が覚醒した新たな力は鎖に馴染んでいた。

「『源氷憑依(ポゼッシオ)』――癪だが、貴様とわたしの魔法は相性がいいらしい。今の貴様が持つ武器には我が氷雪の加護が付される!それで戦え!!………アキくんにもあげるね!これできっと戦いやすくなると思うからっ!」
「この力……そうか、俺の鎖の本質は魂の束縛と自由の『奪取』。灯を奪うこの力とは本質的に近い部分があるって訳
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