53.辺獄・衣鉢継界
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なだけ寝な!!尤も下手すりゃ『今日』に焼き尽くされるだけだがなッ!!」
「それも悪いたぁ言わねえが……ここまでボロクソにやられたら仕返しに一発ドギツいのかまして吠え面かかせたくなってきたッ!!」
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
「………喜べ、吠えたぞ」
「いやそんな『なんか言えよ!』って言われて『なんか。』って返すみたいなことじゃねーから!?」
話し合いも何もなく、ただ言いたいことだけ一方的に吐き出しあって二人は二手に分かれる。打ち合わせも合図もない、たった2年――されど濃密な2年で戦いを積み重ねてきたコンビだからこそ可能な無意識の連携行為だ。
させまいと反応したのは黒竜。世界最悪の熱刃と化した前足を振り下ろし、大地が一瞬で融解する。黒竜はそれを二人の進路を塞ぐように全方へ薙ぐ。元来持ち合わせていた膂力と組み合わさった爆発的な熱波が地を駆けるように二人に押し寄せた。
しかし、それはもう通じない。既に人間は熱を味方につけた。
黒竜すら見上げるほど高くに構えた常勝の雪姫が、戦場音楽を奏でるように両手を掲げる。
「氷造・降り注ぐ氷柱」
瞬間、3階建ての家屋ほどもあろうかという巨大な氷柱が二人の上から無数に降り注いで熱波に直撃し、激しい水蒸気をまき散らしながら火砕流のような熱刃を完全に防ぎ切った。これまでリージュが展開してきた氷に比べて、その氷はぞっとするほどに透き通り、近づくだけで命を吸い取られる錯覚を覚えるほどに冷たかった。
氷そのものは熱に魘され少しずつ溶解していく。だが、その暇を縫って白蛇のように螺旋を描く無数の雪の集合体が煌きながら飛来し、溶岩地帯と化しつつある黒竜へと殺到する。
「氷造・輝石の大蛇――獄炎さえも貪欲に喰らえッ!!」
地面すれすれを駆ける蛇の煌きが鱗粉のような飛沫になって地面に落ち、落ちた場所から地面の熱が奪われて氷が突き立つ。蛇はそのまま黒竜に接近したが――黒竜が凄まじい衝撃と共に足を地面に叩きつけ、全身から噴き出す熱の力をバリアのように展開したために蛇はかき消される。
効果がないように見えるが、本来ならばあの熱はそのまま放射線状に拡散されて接近するこちらを焼くほどの火力がある。あの雪の白蛇に想像を絶するほど熱を奪われて本来の威力が発揮できていないのだ。一気に状況が前進した現状に、アズは感心したようにリージュをちらりと見上げた。
(時間制限はあるようだけど、黒竜のあの火力を押し留める程とは舌を巻くね。オーネストが特別な想いを抱くわけだ……ほんと、この世界の女の子って強いなぁ)
アズが言っているのは肉体が、ではない。生命力に溢れる
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