第百十四話
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という恐怖を体験したからか、翼と虎の子のソードブレイカーを斬り裂かれたからか、レインにももう戦う気はない様子で。俺の言葉に、驚いたような表情で耳を傾けていた。
「だってそうだろ。セブンはユウキと正々堂々戦う約束をしてるんだから、お前がこんなことしちゃ台無しだろ」
「あっ……」
今更そんなことに気づいたようなレインが、今まで戦闘をしていたことが嘘のような声を晒している間に、俺は日本刀《銀ノ月》を鞘の中にしまい込んだ。そして土属性を付与する《砂塵》のアタッチメントを柄から外し、そのアタッチメントと回復薬をレインに向かって放り投げた。
「これ……」
少し逡巡したようなレインだったが、こちらが頷いてみせると遠慮なく回復薬を使い。さらに逆転の一打となったそのアタッチメントは、一つ一つデフォルメされたレインの似顔絵が描かれているもので、それを見てレインは何かを思い出したように得心する。それも当然だ――あれらは、属性を付与するソードスキルを使えない俺のために、レインが協力して作ってくれたものなのだから。つまり生みの親の一人であるレインは、あのアタッチメントの効果は全て知っているはずで、それを忘れるほど周りが見えていなかったということだ。
「あの……ごめんなさい。ショウキくん」
それを自覚できたのか、謝罪の言葉とともに、レインは伏し目がちにアタッチメントを返してきた。それをコートに新造されたアタッチメントのケースに仕舞うと、今度は日本刀《銀ノ月》を構えてみせた。まるで歪みのないその刀身を、レインにも見せつけるようにした。
「この通り、まるで問題ない。……むしろこっちこそ、レインの剣を幾つか……」
「こっちから襲ったのにこっちの剣を心配しなくても!」
よくよく戦闘を思い返してみれば、コレクター仲間の剣を斬ってしまったことを思いだす。それをひとまず謝罪しておくと、戦闘をするような気配が完全に失せていき、代わりにどこかどんよりした雰囲気がログインする。
「じゃあ、減った分は我がリズベット武具店をご利用ください……ってことか?」
「……ふふ。ショウキくんったら商売上手」
ようやくレインの表情に小さな笑みが戻るとともに、レインの背に斬り裂かれていた翼が復活する。するとすぐさま飛び上がり、レインはどこか遠くに飛ぼうとする。
「でも今日は、合わせる顔がないからまた今度! レインちゃん、今度は負けな――ううん、ありがとね」
そう言い残して、レインはどこかに飛翔し去っていく。それを見送って、大きく身体を伸ばし――リズベット武具店に帰ろうと、俺もまた翼を展開しようとした時、出鼻を挫くようにメールが着信する。
送り主は――ユウキで。スリーピング・ナイツがフロアボスに挑める作戦が、アスナ
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