第29話
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その後、フィオナが用意してくれた心尽くしの夕食に舌鼓を打ったリィン達は食後にエリオットの部屋を訪れていた。
〜夜・アルト通り・クレイグ家・エリオットの部屋〜
エリオットの部屋を訪ねたリィン達は部屋中にある様々な楽器を見て驚いていた。
「これは……凄いな。」
「……お店が開けそう。」
一つの部屋にある楽器の多さにリィンとフィーは驚き
「ピアノにバイオリン、管楽器から打楽器まで……キャビネットにあるのはどうやら楽譜らしいな?」
「さ、さすがにこれは趣味の範囲を越えてるだろう。」
「うふふ、一般家庭の家にこんなに楽器があるなんてレンも驚いたわ。」
ラウラが感心している様子で部屋を見回している中マキアスは信じられない表情でエリオットを見つめ、レンは興味ありげな表情で部屋を見回していた。
「あはは……ちょっと引いたよね?亡くなった母さんが結構有名なピアニストでさ。姉さんと僕はその影響を受けてるってわけ。」
「そうだったのか……」
「こんな環境で育ったのなら吹奏楽部を選ぶのも無理ないな。」
「でも……どうして夕方会った人達と同じ学校に行かなかったの?」
エリオットの説明を聞いたリィンやマキアスが納得している中フィーは不思議そうな表情で尋ねた。
「フィー……」
「それは……」
「まあ、大体は予想できるけどね。」
フィーの疑問を聞いたラウラとリィンが複雑そうな表情をしている中レンは静かな表情で呟いてエリオットを見つめた。
「あはは、いいんだ。……何となくみんなには気付かれちゃったと思うけど。僕、士官学院を受ける前までは音楽院を志望していたんだよね。」
「…………あ…………」
「………………」
そしてエリオットは士官学院に入るまでの経緯を話し始めた。
「小さい頃から、姉さんと一緒に母さんのピアノを聴きながら育ってきた。父さんは豪快な人で、音楽には疎かったけど母さんにはベタ惚れだったみたいで…………いつもいつも、この家には暖かい音色と笑顔が満ち溢れていたんだ。
でも、その母さんが7年前に病気で亡くなって…………姉さんと僕は、当然のように母さんと同じ道を歩いて行った。そして姉さんは、音楽院に入ってピアニストとしての道を歩きはじめて……僕も当然のように、それに続こうとした。―――でも、父さんはそれを許してくれなかった。
『趣味程度ならともかく、帝国男子が音楽で生計を立てるなど認められん。』―――どんなに食い下がってもそう言って首を縦に振ってくれなかった。それどころか、帝国にある軍学校や士官学校を一通り勧めてきたりして……結局……僕は音楽院への進学を諦めるしかなかった。」
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