104話 起床
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ていたメディさんはぼんやりしてたせいで出遅れた私に視線を移す。慌てて表情を引き締め背筋を伸ばし、私は座った体勢ながらも深々と頭を下げた。
「トウカと申します」
この場で苗字をわざわざ言うのは無粋だろう。礼儀正しいのね、と微笑まれて少しくすぐったい。あぁ……おばあちゃんっていいな。
とはいえこのパーティメンバーで祖母がいるのは……いや、誰もいないって言うのが正しそうだけど。私はいない、エルトはわからない、ククールは……分からないけど修道院にいたってことはそういうことだろうし、ゼシカはお母上以外の肉親はいないだろう、あの様子だと。いるかもしれないよ?私は知らないし。
うーん、ないものねだり。いらっしゃるかわからないけどメディさんにお孫さんがいるなら羨ましい限りだよ。
ともあれヌーク草のスープをエルトが横で口をつけているのに気づいて慌てて私もカップを持った。どうやら何時もは考え事しながらでも動けるけど駄目みたいだ。体を冷やすっていうのはいけないね。
「あ……美味しい」
「ちょっと辛いけど体にじんわり染みとおる感じがするわ……」
マシュマロが好きだからてっきり私は甘党だと思ってたんだけど。甘党でも辛いのが好き、でも充分ありえるよね。ピリリと唐辛子のような……?ちょっと違うけど、そんな辛さがして、香りもそこはかとなくスパイシー。でも飲み込めないほど辛いわけじゃない。冬場の毛布みたいに優しい。
そしてたった一口飲み込んだだけなのに胃から温かさが広がった。ゼシカの言う通り、じんわり染みとおるって正しくそう。
「ヌーク草のスープを飲めば外に出ても大丈夫だろうて。まぁ今夜はこの通り吹雪ですからな、ククールさんが目を覚ましてもこうして温まっておくといいでしょうな」
「ありがたくそうさせて頂くぞい」
うーん、まだククールは起きないのかな。私を庇ったときに頭でも打ち付けちゃったんだろうか、特に外傷が見当たらなかったからうっかりしてた。もう少し待って起きないようならエルトにベホマをかけてもらわないとまずいかも……。
あれこれ考えつつぴりぴり美味しいスープを飲んで爆ぜる火に温まっていたら本格的に眠くなってきた。いけないいけない、私はいつだって臣下だ。陛下の前、恩人の前でそんな情けないのはいけないね。頬を軽く叩いて眠気を飛ばし、船を漕ぎかけていたのをなんとかした。
その時、下の階からあの大きな犬が帰ってきて、暖炉の前で寝転がる。……つまり、ククールが起きたと見ていいのかな。
そしてその予想通り、足取りもしっかりしたククールが寒そうに上がってきて、私はようやく安心できた。暖炉の前の席は目覚めたばっかりのククールで正しかったみたい。たったひとりで目覚めたからか、みんなを見るとククールの少しこ
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