第十話 またしての崩御その一
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第十話 またしての崩御
紫の薔薇が散った、多くの者がこう思った。
王が崩御した、その崩御を看取ってだった。
大公は項垂れてだ、共にいる側近達に言った。
「まだお若いというのに」
「それでもでしたね」
「こうして」
「無念だ」
見れば王妃も項垂れている、涙を必死に堪えている。大公はその王妃を横目で見つつそのうえで言うのだった。
「しかしだ」
「それでもですね」
「今の我々は悲しくてもですね」
「泣いてはならない」
「そうですね」
「そうだ、悲しみを抑えてだ」
そしてというのだ。
「政治を進めなければならない」
「内を収めてですね」
「そして外に対するべきですね」
「王の葬儀も行い」
「そのうえで」
「即位だ」
大公は自ら言った。
「新しい王のな」
「そしてその王はですね」
「大公ですね」
「貴方様ですね」
「そうなるな」
ここでは目を閉じてだ、大公は言った。
「やはり」
「エヴァンズ家でただ一人の男子です」
「それならばです」
「お願いします」
「立たれて下さい」
「わかっている」
これが大公の返事だった。
「ではその様にしよう」
「はい、それでは」
「葬儀と即位の用意をしましょう」
「共に進めていきましょう」
「葬儀が終わると同時にだ」
大公も言った。
「いいな」
「はい、それでは」
「すぐにです」
「葬儀の用意に入りましょう」
「そして」
「ここまで早いとは思わなかった」
これが大公の返事だった。
「まさかな」
「王がこうまで早く崩御されるとは」
「まだ即位されたばかりなのに」
「そうはですね」
「思われませんでしたね」
「全くだ」
首を横に振っての言葉だった、今度は。
「何とかと思ったが」
「それはですね」
「適いませんでしたね」
「東西から霊薬、妙薬を取り寄せて飲んで頂きましたが」
「それでも」
「神の思し召しか」
顔を上にも上げたがそれは嘆きのものだった。
「これは」
「そうなるのでしょうか」
「だとすればどうも」
「これは」
「いや、思うまい」
ここから先はとだ、大公は側近達だけでなく自分にも言った。
「それはな」
「ですね、その方がいいですね」
「思っても詮無きこと」
「だからこそ」
「そうだ、思わずにだ」
そうしてというのだ。
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