9話目 好敵手(後)
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亀裂が増え、大木にヒビが入る。
抵抗するチルット(高さ0.4m)を痛めつけるギャラドス(高さ6.5m)は、傍から見ればタチの悪い虐待のような光景であった。
「チルット! “うたう”」
「KK! 吹っ飛ばせ!」
壮絶な虐待のような状況から逃れるため、チルットは相手を眠らせる“うたう”を使おうとする。それを阻止するため、ギャラドスは長い胴体で遠心力を利用して思いっきり尻尾を叩きつけ、チルットを吹っ飛ばす。
両者の距離が開く。
「チルット“うたう”を準備してから近づいて」
「KK! “りゅうのいかり”」
眠らせる技を使いながら突撃してくるチルットに対し、ギャラドスは炎のような大きな弾を1発チルットに放った。突然の遠距離攻撃にチルットは技を中断して回避する。その隙にギャラドスが近づく。
“りゅうのいかり”は、遠距離まで届き、相手にダメージを与える技である。この技には、使用するポケモンに依らず誰が使用しても同じ威力になる、という特徴がある。
遠距離にも届く技ということで、“りゅうのいかり”を覚えた当時にはそれなりに重宝した技であった。しかし上記の特徴のせいで、ギャラドスがどんなに強くなろうとも“りゅうのいかり”の威力が上がることは決して無い。そのため最近ではすっかり使わなくなった技であった。
“りゅうのいかり”のおかげでチルットに接近したギャラドスは、暴力的な攻撃を再開する。負けじと相手のチルットも反撃し、ギャラドスにダメージを与えていく。
しかし、やがてチルットは体力が尽き、戦闘不能となって倒れた。
「アナタ、さっきから全然、回避の指示をしないわね」
倒れたチルットをねぎらったエレナは、そうグレイに声をかけてきた。
エレナが指摘した事は事実である。このバトルで、グレイは1度もギャラドスに回避行動を指示していない。
「もっとダメージを受けなくて済む戦い方、あったんじゃないかしら?」
「確かにあったかもな。でもな、このKK……ギャラドスは、そういう逃げの姿勢をとる戦い方は嫌いなんだよ」
「ポケモンの意思を尊重するってこと? でもアナタの戦略や作戦はどうするの? アナタはギャラドス言いなりになるの?」
「要所では指示してるだろ?」
「確かに要所で指示はしているけれど……あれはアナタの意思なの? ギャラドスの意思に反しない範囲で提案しているだけではないの?」
(よく観てるな……相手のことも、相手のポケモンのことも……)
グレイはエレナの観察力に驚いた。
エレナの言うことは確かに当たっている。グレイとギャラドスの関係は、司令官と戦士の関係というよりは、相談役と戦士という表現の方が正しい。
「……あえて言うけど、さっきアナタのチョロネコを倒したアタシのアブソルはね、今のアタシのポケモンで一番強いコなの」
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