8話目 好敵手(前)
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エレナと会い、財布スリ事件を経験したその日の夜のうちに、グレイはコイキング売りのコインとギラドに、コイキング売りを辞めることを伝えることにした。
おそらくコインが文句を言い出すが、ギラドが仲裁しに入って味方をしてくれて、結局は辞めることができるだろう。グレイはそう予想していた。
実際にコイキング売りを辞めることを伝えたら、グレイの予想通りであった。
ちなみに、グレイはコイキング売りを辞めるとは言ったものの、その夜はトラックの中で寝かせてもらった。図々しいのもグレイの強みである。
現在、コンドシティは朝である。
グレイは今度こそコイキング売り一行と別れ、コンドシティのとあるレストランを目指していた。
ちなみに、朝食はコイキング売り一行の物を貰って食べた。図々しいのもグレイの強みである。
グレイは目的のレストランに到着した。レストランの前にはエレナが待っていた。
「グレイ、呼び出してゴメン。どうしてもアナタに話さなければいけない事があって……」
「ああ、分かってるよ。とりあえず中に入ろうぜ」
昨日エレナから『会って話しがしたい』とグレイに連絡があった。グレイの方も、コイキング売りを辞めたことをエレナに伝えたかったので、それに応じ、こうして会うことになったのである。
レストランに入り、朝食のメニューを見ながらエレナがグレイに問いかける。
「グレイは何か頼まないの? アタシが呼び出した訳だし、アタシが払うわよ?」
女の子に飯代を出させるのはどうかとグレイは思った。しかしすぐに、旅に出て初めて会った時にいきなり金を借りた事実を思い出す。もはやエレナに対して取り繕う体面など無いことに気がついた。
「じゃあ、お言葉甘えて」
朝食はとってきたグレイだが、無料で食べられるなら食べた方が良いとグレイは判断した。図々しいのもグレイの強みである。
レストランに入ってから少し経ち、エレナがグレイに話しを始める。
「グレイ、アナタに謝らなければいけない事があるの」
エレナの雰囲気で、なんとなくエレナが本題に入った気がしたグレイは黙って聞く。
「昨日、アナタがコイキング売りの仲間だって聞いて、それで……アナタを頭ごなしに否定してしまって、ごめんなさい」
「別に気にしてない」
「アタシは親からお金を貰って旅してるから、旅の中でお金に本当に困った場面って無かったの。だから、アナタの苦労を理解することができなかったの」
さらにエレナは続ける。
「アナタがコイキング売りの仲間だってことは、アタシにとっては少し複雑な気持ちだけど、親からお金を貰っている今のアタシには、アナタの生き方を否定する資格はないわ」
既にコイキング売りは辞めたグレイだが、エレナが自分のことを受け入れようとしてくれている事は内心嬉しかった
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