7話目 決心
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なら大丈夫だろう。余計な事は考えるな)
心配の気持ちを紛らわすために、今度はグレイから男に声をかける。
「しかし人の財布を盗むとは、お前らも悪人だな」
「『お前ら』? お、おいおい……冗談はやめろよ。おれは盗みなんてしてないさ」
「あ? 白々しいこと言うなカス! 盗んでんじゃねーか!」
「お、おれは、追いかけられている仲間を助けてるだけだ」
「そのお前の仲間が財布盗んでんだよ!」
「お、おれは仲間が財布を盗んでるなんて知らなかったさ。き、きみから聞いて初めて知ったんだ」
「女がお前の横でレパルダスから財布受け取ってんのを、隣で見ておいてか?」
「そ、それは……そう、盗んだ財布とは知らなかったんだ!」
「言い訳が苦しいぞ。お前、女が盗んだ財布の中身、もらってんだろ?」
「た、確かにおれは、あの女を助けた後、金をもらっている。だが、それはおれが盗んだ金じゃない」
性格の悪そうな男は、言葉を続けて言う。
「お、おれがやっている事は、追いかけられている仲間を助けることだ。そして、逃げる仲間を助けると『なぜか』仲間がおれに金をくれる。そ、それだけだ。助けた仲間が財布を盗んでいるとは知らないし、仲間から貰った金が盗まれたものとも知らない。つまりおれは何も知らないんだ!」
実際にはこの性格の悪そうな男は、目つきの悪い女とコンビを組んで盗みに加担している訳だが、直接自分が盗んでいない事をいいことに、知らなかったという言い訳で逃げるつもりである。
建前としては、追われている仲間を助けると、後で『なぜか』金がもらえる。そういう主張である。
もちろんグレイは、男が盗みに積極的に協力していることは分かっていた。
しかし、男のその言い訳を聞いたグレイはふと、この事件が起こる前にエレナと会話していた時の情景を思い出した。
********
『ねえグレイ、コイキング売りは今すぐ辞めるべきよ。アナタだって人を騙すのは気分の良いものじゃないって思っているんでしょう?』
『ああ、いや……オレのやっている事はギャラドスで戦うことで、進化前のコイキングを宣伝するってだけで、オレが騙してる訳では――』
『でも! その人たちからバイト代をもらってるってことは、騙しているのと同じことでしょう?』
********
(あー……オレも同じような事、やってたな。この男の外道さに比べれば、オレの方がマシと信じたいが……)
エレナとの会話を思い出し、グレイはそう思った。
なおも言い訳を延々と続ける男に向かって、グレイは暴言を吐く。
「うるせーな、黙ってろよ!」
グレイの言葉にビビった男は、それ以降口を閉ざした。
(コイキング売りは今日でやめよう。目の前にいるカスと同類っていうのは嫌だし、なによりエレナとは良い関係を保ちたいしな)
グ
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