7話目 決心
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レイは静かに決心した。
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目つきの悪い女とエレナの戦いが続いていたが、決着は目前であった。
「ジュプトル“リーフブレード” アブソル“でんこうせっか”」
エレナのポケモンの攻撃が、敵ポケモンに直撃する。敵のポケモンは、今の攻撃によって戦闘不能となって倒れた。
自分のポケモンが全て戦闘不能になった事を確認した女は、再び逃げ始める。しかし、エレナのポケモンが追いつき、逃げた女を取り押さえた。
「グレイとアタシの財布、返してちょうだい!」
「けっ! こんなモンがそんなに大事かよ!」
そう言いながら、女は盗んだ財布をエレナの顔に向けて投げつけた。
財布を取り返したエレナは、先に述べたポケナビという多機能な携帯端末を使って女を警察に通報し始めた。
「おいおい! 財布は返したろ! これ以上何が不満なんだよ!?」
「アナタのやった事は、立派な犯罪よ」
「たかだか財布盗んだだけだろうが!」
「それが犯罪だって言ってるの」
しばらく抵抗していた女は、やがて身体能力において人間はポケモンに勝てないという誰もが知っている事を悟り、抵抗を諦めた。
目つきの悪い女がエレナに話しかける。
「なあ、あんた。金に困った経験ないだろ。見れば分かるさ。あんたは親に金をもらいながら旅してるトレーナーだろ?」
「なに? 突然……」
「あんたは、金を恵んでくれる親がいるから、たまたま財布を盗まなくても生活できる立場にあるだけだ」
目つきの悪い女はさらに言葉を続ける。
「あんたは、盗みは立派な犯罪だ、なんて言うけどな。もし親が突然金をくれなくなったら、あんたも他人の財布を盗むかもしれねえんだぞ?」
「……」
エレナは言葉につまった。『アルバイトでもして、自分で稼げばいいじゃない』とは言えなかった。親から金をもらっている自分が言える言葉ではないとエレナは思った。
(グレイなら言えるのかしら? 『自分で稼げばいい』って……)
そう思ったエレナだが、程度が違うとは言えグレイも完全に白とは言えない方法で金を稼いでいる事を思い出した。
(アタシ、自分の正義ばかり振りかざして……親からお金をもらえないグレイの苦労を分かってなかったわ……)
程度は浅いながらも、裏世界に初めて触れたエレナは、自身の価値観に確実な変化を起こしていた。
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