第6章 流されて異界
第148話 召喚の理由
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連中の事も簡単に推測出来る。
「いや、その事に関してなら有希に罪はないで」
何もかも……かどうかは分からないけど、ある程度の背景についてなら分かっている心算やから。
約二メートル。ふたりの距離を数字に表わすのなら、たったそれだけの数字でしかない距離が、何故だか今は果てしない距離のように感じる。
「さつきの例と同じ。俺も、それに水晶宮の方も有希が何故、急に俺を召喚する心算となったのか。その辺りの事情は既に察して居る」
……心算。
おそらく、水晶宮の方は、こうなる事が分かって居た……実際にどのような事件が起きるのかまでは分からなかったはずだが、何らかの事件が起きる事は予測していたはず。
故に、有希が俺を召喚する事を認めた上で、その後の事件を二人がどうやって解決して行くのか。其処までが水晶宮が俺たちに与えた試練。つまり、そう言う事だと思う。
有希の師。現在の仙術の師匠である玄辰水星が画策した……可能性は低いと思うから、おそらく亮。現在の水晶宮の長史殿の差し金だとは思うが……。
確かに初めからこれは試練だ、と断った上で与える類の試練ではないと思うけど、それにしたって、今回の一連の流れは少し難易度が高過ぎはしませんかねぇ。
俺でなければ確実に失敗していた。少なくとも、つい先日まで起きて居たアラハバキ召喚事件に関して言うのなら、あの事件を無事解決に導ける存在はこの世界にも早々居ないと思うのですが。
かつての自分がやっていた事を棚に上げて、非常に自分勝手な事を考える俺。但し、それは心の中でのみ。表面上はそれまでと同じ雰囲気。少し諭すような調子で言葉を紡ぐ。
「多分、何処かから俺に関するショウもない話を聞かされた。そう言う事なんやろう?」
例えば、このままだと俺が死ぬ可能性が高い、と言う話を聞かされたとか……な。
俺の問い掛けに、別に驚く様子もなく普段通りの淡々とした表情で小さく首肯く有希。但し、表情は普段通りでも場所が非日常。流石にこれは、――こんな場所で若い男女が向かいあって語る言葉があるとするなら、それは愛の言葉でしょう。
……多分。
そう、有希は俺の生命が危機的状況にある事を知っていた。いや、多分、それは少しニュアンスが違うかも知れないな。
浮かんで来た考えを、しかし、即座に否定。
おそらく、彼女が俺を召喚する事を決めたが故に、俺は一度死に掛けた。そう言う事だと思う。状況や、奴らの行動パターンから推測すると、こちらの方がより正解に近いかも知れない。
その根拠のひとつ目。ゴアルスハウゼンの吸血鬼騒動の際に顕われたゲルマニア皇太子が、キュルケから俺やタバサを助けてくれと頼まれた際、彼には先約
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