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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第148話 召喚の理由
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までしか映し出さない事が分かった事によって、多少、心に余裕が産まれたのも間違いない。
 敢えて視線を逸らす事もなく、鏡の中に映る彼女に視線を合わせる俺。ハルヒやさつきなら視線を逸らせるレベルの強い視線。

 しかし――

「あなたに叶えて貰いたい望みを伝えに来た」

 予想通り、鏡を挟んだとは言え、その龍気の籠められた視線を正面から受け止める有希。

 鏡越しに彼女を見つめる俺と、その俺を見つめ返す彼女の真摯な瞳。カレンダー的な今宵の日付と、その日に対する世間一般のイメージ。更に、現在の二人の姿。
 こりゃ、その火を飛び越して来い、では済みそうもない雰囲気だな。少し現状を茶化して考えてみるのだが……。

 あの話の二人はその場はそれで納まる。但し、それが現代社会で通じる常識かと問われると、う〜む、どうだろうか……と答えるしかない。
 さて、どうした物か。彼女の事だから無理難題を押し付けて来る事はないだろうと考えて軽く受けた約束なのだが……。

「あなたの暮らしていた世界を感じてみたい」

 約束を簡単に反故には出来ない。しかし、今ここで叶えられる望み……と言うヤツの種類によっては――
 自らの気持ちすらはっきりしていない、更に言うと、そんな重要な事を深く考えもせずに先送りを続けて来た事に対するツケを一気に払わされそうな現状に、狼狽えるしか方法がない俺。そんな、正直に言うとかなりみっともない精神状態の俺に対して、そっと囁かれるように紡ぎ出された彼女の願い。
 普通に考えるのなら非常に簡単な内容。但し――

 鏡の世界……左右逆となった世界に佇む彼女を改めて見つめる俺。そう、彼女の望みを叶えるのは簡単だ。俺の記憶の中にあるハルケギニアの風景を直接、彼女に体験させてやれば良い。その程度の仙術ならば何種類も存在している。
 但し、おそらく彼女の望みはそんな単純な話ではない。

 成るほど。……小さく、ため息をひとつ吐き出す俺。そして続けて、

「それは、もう向こうの世界に行っても良い。そう言う風に取っても良い、と言う事なんやな?」

 オマエさんを連れて行く、行かないは別にして。
 問い掛けに対する問い掛け。更に言うとこれは少し意味不明の問い掛けでもある。
 ――いや、厳密に言うとこれは意味不明ではない。ただ、この言葉ではまるで、有希が引き留めるから俺が今までハルケギニアに帰らなかった。そう言っているようにしか聞こえないと言う事。

 しかし――
 しかし、俺の問い掛けに対して小さく首肯く彼女。これは間違いなく肯定。

「この十二月にあなたを召喚するかどうかは、わたしの意志に任せると水晶宮の方からは伝えられていた」

 淡々と話しを続ける有希。
 彼女にすべての判断を任せた。いや、水晶宮の方
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