第6章 流されて異界
第148話 召喚の理由
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「朝比奈みくるが時間跳躍能力者である可能性がある事は、水晶宮の方でも既に確認済み」
難しい顔で、鏡に映った自分の顔を睨み付けている俺。その俺の背中に投げ掛けられる良く知っている少女の声。
反射的に振り返ろうとして、しかし、鏡に映り込んだ白い湯気の向こう側に立つ人影の現在の様子を確認。そうして、辛うじて思い止まる。
「彼女……と水晶宮にて呼称される最初の時間跳躍能力者に、朝比奈みくると同じ身体的特徴があったのかについては未だ不明」
振り返る事もなく、彼女の声を背中で受け止めるのみの俺を訝しむ事もなく、淡々と言葉を続ける有希。
明かりの加減からなのか、それとも湯気の作用なのか。鏡に映る彼女の姿は、少し輪郭の定まらない、薄い影のように今は感じられる。
大量の水気を含む紫の髪の毛。普段はハーフリムの銀により怜悧な印象の強いその瞳は、今宵彼女の設定年齢に相応しい幼い雰囲気。少し細い眉。綺麗に通った鼻筋。やや受け口気味の薄い唇。
実際、其処に存在しているのが疑われるかのような薄い気配。現実に――。リアルに存在しているはずなのに、何故か其処にいないような……人に似せて作られた人形の如き雰囲気。そして、真っ当な生命体としては考えられない完全な左右対称の容貌。
人の世と、それ以外の世界。その境界線上を体現する……。その境界線上にのみ存在しているかのような彼女。
肌は……姿見の角度、それに周囲の湯気に隠されて少し確認し難いが、この場の温度から考えると、普段と変わらない白さを維持。もしかすると彼女自身も少し緊張しているのかも知れない。
肩から胸に掛けてのラインは非常に美しく、理想的な形で鎖骨が浮かび上がる。そこに、やや小振りながらも将来は期待……出来るかも知れない双丘が続いていた。
……と言うか、
「せめて、いちじくの葉ぐらいは用意して欲しいんだけどな」
アダムとイヴじゃないんやから。
自らの驚きを強く感じさせない為に、少しの軽口で応じる俺。但し、それは所詮小細工。精神的に繋がっている彼女に俺の感情がリアルタイムで伝わって居る事は想像に難くない。
ただ……。
ただ、彼女がこんなトコロまでやって来たと言う事はそれなりの理由があるのでしょうが、それにしたって、産まれたままの姿で現われられたら流石に目のやり場に困るでしょうが。
確かに、彼女に取って俺の裸は別に珍しい物ではない事は認めますよ。有希には何度も死の縁から救い出されています。当然それは、術で瞬間に回復させられる類の物ばかりなどではなく、意識が完全に回復するまで二晩、三晩と掛かった呪いも存在していました。
……その間、彼女は俺の看病をずっと続けてくれたのですから。
「まぁ、涼宮ハルヒが一度目の世界を滅ぼしたバビロンの大淫婦の可能
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