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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 25
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木の実だった。
 神父が興味深げに手元を覗く。
 「……鳥が落としたのでしょうか?」
 「鳥って、夜に木の実を採取したりするんですかね!? あと、上じゃなく正面から飛んで来ましたよ!? そこはかとなく悪意を感じるんですけど!」
 地面に放り投げてやろうかと腕を振り上げ……止めた。
 暗くて判別し難いが、手のひらに感じる質と形状は、恐らく団栗だ。火を通せば立派な食料になる。捨てるなんて勿体無いじゃないか。
 態度では憤慨しつつも、指輪と同じポケットにいそいそとしまう。
 「暗い中で動く貴女の額を狙い撃ちできる人間が居るとは思えませんが……ああ。ですが、どうやら彼らは間に合ったようです」
 「へ?」
 「ほら。貴女にも聴こえると思いますよ」
 アーレストに促されて呼吸を抑え、慎重に音を拾う。

 遠く……ずっと遠くで、風が走っていた。


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