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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 25
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ましい旋律を奏でた。

 「讃えよ、我らが偉大なる王の御名。
 掲げよ、我らが偽り無き誓いの剣。
 数多の民は数多の実りと共に在り。
 数多の技は世代を繋ぐ絆の証。
 数多の法は栄光の盾となり鎧を纏う。
 絶えざる秩序に命を捧げよ、神の騎士。
 いざや天高く、風広く、海深く。
 唱えよ、我らが女神の加護を……」

 耳を塞いでも頭の奥まで淀み無く響く、大音量の歌声。
 肌を通して伝わる振動は、各所に隠れていた自然界の生物達も驚かせてしまったらしい。二人の周辺で、人間とは違う無数の気配がざわりと動いた。
 (何処かの街で聴いた記憶がある。……アルスエルナ国軍の軍歌だ)
 王族や貴族に国を護る権限と役目を与えられた、幾百幾千の武装集団達。
 彼らの上位に立つ王国軍が、士気を高める目的で代々受け継いできた歌。
 「……この歌が貴女への答えです、シャムロック。はぐらかしも無ければ誤魔化しも一切ありません。貴女が気付いていない全てが歌に込められています。後は自身で探しなさい」
 声を戻したアーレストは「ふぅ……」と軽く息を吐き。また、足を動かし始めた。
 砂を踏む音と足先で草を掻き分ける音が、解放されたミートリッテの両耳を通過しては消えていく。
 (軍歌が答え……? 私が知りたがってる事全部、歌が教えてくれてる?)
 アーレストは「はぐらかしも誤魔化しも一切無い」と断言した。
 つまり、軍歌を理解すれば一連の騒動に隠された真実も、アーレストが「あいつら」を裏切った理由も、みんな理解できるらしい。
 ならば。
 ミートリッテは腕で涙を拭い、素直に思案する。
 (基本は「女神アリアの名の下、国王陛下の治世を全力で守ろう」って内容よね。中盤の民やら技やらの語りは、具体的に何の為に戦うのかを兵士達に自覚させる狙いでもあるんだろうけど……)
 国王陛下に忠誠を誓い。女神アリアの加護を願い。我らは剣を持ち、剣となって、母国の秩序を守り抜こう。
 では、秩序とは何か。
 総ての民は労働によって実りを捧げる。
 あらゆる技は、あらゆる術となる。
 故に法は人を定め、道を護り、形を示す。
 さぁ、剣よ

 『お前が守りたいものは何だ?』

 「え」

 『人の世の理を認めろ。人間は所詮、人間以上にも、人間以下にもなれん』

 「だ、誰!?」
 「どうしました?」
 「声! 女の人みたいな声が!」
 慌てて首を回すミートリッテ。アーレストは数秒沈黙し……
 「……まだ、どなたもいらしてませんが?」
 不思議そうに瞬く。
 「で、でも! すっごく偉そうな言葉遣いがはっきり聴こえってぇえっ!?」
 ビシッ! と、何かが額に飛んで来た。
 腹部に転がり落ちたそれを手に取ってみると、親指の爪ほどの丸っこい
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