SIDE:A
第七話
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
全身で歓びの感情を露にする少年の頭を苦笑した青年が撫でる。
始めて息子に敗北したことになるが、父としては嬉しいやら寂しいやら。その胸中には複雑な感情が渦巻いていた。
本体に飛びっきりの笑顔でサムズアップした分身体がドロンと音を立てて消える。それと同時に影分身の情報や経験が還元された。
思わずその場に座り込んでしまう。八門遁甲の第六門までを解放したのだ。その疲労は半端ではないだろう。
「とうとう追い抜かれちゃったなぁ。これでまだ十五歳なんだから将来どこまで強くなるのか、楽しみでもありちょっと不安でもあるよ」
隣に腰掛けた青年が苦笑する。
少年はそのまま上体を倒して寝転び、青い空を見上げた。
「まあこれでも父さんを目標に頑張ってきたからな。まだまだ強くなるつもりさ」
「それはどうして?」
何気ない質問。少年は特に考えることなく、思ったことをそのまま口にした。
「やっぱさ、知り合いが死ぬのは悲しいじゃん。なら自分の周りにいる人くらい守れるようになりたいってね」
その答えをどう解釈したのか、くすっと笑った青年は青空のように朗らかな笑みを浮かべた。
「そっか。やっぱり、ハルトは僕たちの息子だね」
ほのぼのとした空気が流れる。
すると、煙管を吹かした蝦蟇蛙がやってきて、少年の隣に座った。
「おーいっちっち……。お前、ちびっこいのになかなかやるけんのぅ。まさかこの儂が投げ飛ばされるとは思わなんだ」
「この子は色々と規格外だからね。なんか最近は気合いで物事をどうにかしてしまう方向に目覚めているし。本当に、一体どこへ向かってるのやら……」
「ガッハッハッハッハ! 流石は四代目の倅かいのぅ。ところで儂が相手したあの影分身、ただの分身じゃねぇだろぅ? 八門遁甲まで開いていたんじゃし。ありゃなんじゃ?」
蝦蟇蛙の疑問はもっともだ。影分身とはチャクラで術者の実体を作り出し、物理的接触を可能にする高等忍術だ。
発動時にチャクラが本体から各分身体へ均等に分けられるため、見分けるのは非常に困難だが、一方衝撃に弱く浅い傷を受けただけで術が解ける場合もある。そのため八門遁甲など術者への反動が大きい術を分身は使えないというのが一般的に知られている影分身の術である。
しかし、先ほどまで青年が使用していた術はただの影分身にあらず。
「あれは俺が独自に開発した特製の影分身だよ。チャクラの三分の二を使う必要があるけど、限りなく本体に近い分身を作ることが出来るんだ。気を失うか致命傷を受けない限り術は解けない優れものだよ。まあ、難点としては一体しか作れないんだけどな」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ