八話:想い
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は既に二人の女性を気になってしまっている。
不誠実なことだとは理解している。それにこの感情は本当の意味での好きではない。
誰よりも一人の人を好きになる。愛とはそういうものではないのか。
少なくともぐだ男はそう思っている。
「でも、負けないで! 夏期講習さえ乗り越えたら後は本当の休みよ! 勿論、宿題も山のように出すけど、それはそれよ!」
本当に好きな人を選ばなければきっと後悔する。
何より相手に対して申し訳が立たない。
幾人もの女性を愛せる程甲斐性があるわけでもない。
ただ、一人を愛するのだ。
三蔵ちゃんの話が右から左に流れていくが彼は気づかない。
「じゃあ、色々ある休みだけどみんな頑張って! 頑張れば必ず功徳は来るから!」
締めの言葉を言い終わり満足そうに頷く三蔵ちゃん。
その様子にぐだ男は今更ながらに話を聞いていなかったことに気付く。
しかし、気にしても仕方がないので流れに乗り立ち上がる。
そこへブリュンヒルデに纏わりつかれ鬱陶しそうにしたジャンヌ・オルタが来る。
「ちょっと、ぐだ男。あんた夏休み暇? というか暇よね」
『どうしたの?』
「食べログって知ってる? 最近はまってるのよ。おごり高ぶった有名店をボロクソに評価をして地獄にたたき落とす最高の趣味なんだけど」
見下したような顔をしながらも喜びを隠しきれない表情をするジャンヌ・オルタ。
どうやら叩き落すと言いながらしっかりと美食に満足している模様だ。
『それに付き合えってこと?』
「そうよ。このテケテケ槍女も行くんだけど……こいつだけだと何かと不安だからあんたも付き合わせてあげようってわけ」
抱き着いているブリュンヒルデをビシバシと叩きながら語るジャンヌ・オルタ。
なんでも趣味であるブログのためにグルメハントをしているらしい。
ぐだ男にとっては気になる相手と一緒にいられるチャンスである。
以前であれば二つ返事で了承していただろう。しかしながら。
『ごめん。予定が入るかもしれないから確約はできない』
ぐだ男はやんわりではあるが断った。
「はあ? 何よ、それ」
『行ける時なら手伝うから。それで許して』
しかめっ面をするジャンヌ・オルタに手を合わせて謝る。
彼女は魅力的な女性だ。そんなことは百も承知だ。
だが、そんな彼女よりも彼には気になる女性がいた。
「……そう、仕方ないわね」
そんな彼の想いを薄々感じ取ったのかどうかは分からないが彼女は諦める。
今まで見せたことがないような寂しげな表情を一瞬だけ覗かせ彼女は立ち去っていく。
『……帰ろう』
何か心に重いものが載ったような気分になりながら荷物を纏める。
終業式ということ
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