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剣士さんとドラクエ[
103話 雪崩
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 不穏な音をたてる雪の音に気づけないぐらい集中して、気づいた時には逃げることすら出来なかったというわけ。間抜けなことに、最悪なことに、雪崩に巻き込まれてしまった。陛下も姫も置き去りにして。なお酷いことに、気づけなかったせいで他のみんなを巻き込んで。

 雪崩。前世ならほぼ死んでるだろう。だからといって今世の強くなった私でも偉大で無慈悲な自然現象に打ち勝てるほど超越的な存在なわけじゃない。戦闘能力とか、関係ないんだ。自然を前にしたら。ただ逃げれなければ巻き込まれ、なす術もない。

 寸前に気づいたゼシカのメラゾーマが炸裂する前に圧倒的な質量に視界が白く染まってしまう。庇うように私の前に立っていたククールはバッと振り返り、近くの私を、わたしを……抱きしめた?

 その体温はククールの氷のように冷えきったマント越しじゃあ到底わからないけど。それよりなんでゼシカを守らないの、私たちの後ろの。素直に嬉しいけど!近いからなのか!なんでなんだ!仲間想いのククールだからか!なら本当にありがたいけど!ありがとう!

 白く染まった視界が暗転するのも、その一瞬後。

 冷たい色の瞳を見上げ、その表情を見る前に……炎に包まれた時よりも明確な絶望感が、ひたひたと、背中を浸していったような……そんな気がした。なのに、胸の中にあったのは、確かな安心感。

・・・・
・・・
・・


 なつかしいような、安心するような香りだなというのが目覚めた時の感想。目の前にいた大きな犬にびっくりしてそれはすぐに吹き飛んでしまったけどね。

 見知らぬ場所、温かなベッド。隣のベッドで呑気に感じられるほどある意味幸せそうなのは……ククール?相変わらず布団を抱き枕にして……何の夢を見てるんだろう。その隣で同じく犬に起こされたのかびっくりした顔で固まっているのはトウカだったから、僕はすごく安心した。

 上着をみんなに配ったはいいものの一番薄着のトウカがあの雪崩で平気だったのは本当に安心した。トウカ、力だけじゃなく体も強かったんだね……。風邪ひいてるの見たことないし。

「あ、あれ……ここは……」
「トウカ、どうしたの」
「なんでエルトは落ち着いてるわけ……ここはどこなんだろう……」
「誰かが助けてくれたんじゃないの?」
「あぁ、なんだ、それもそうだね」

 らしくもなく狼狽えていたトウカはほっと息を吐く。流石にびっくりしたのかな。そして隣のベッドですやすやと寝息を立てているククールの肩を揺さぶった。起こさなくてもいいと思うんだけどな……。あ、でも室内とはいえ寒いし、風邪ひかれちゃこまるよね、布団かぶってないし。

「ククール、ククールってば」
「……、うぅ……」
「起きてよククール、風邪ひいちゃうよ」
「……朝ご飯はいらない……
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