103話 雪崩
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ビュゴー。口に出すとしたらこんな効果音が適当、かな。雪混じりの風は全身凍てつくみたいに冷たいし、髪の毛だろうと服のすそだろうとバタバタさせてしまう。せっかく体を縮めていてもあっという間にわびしい熱は奪われる。
こういう時のための防寒具、だよね。幸いにも私の手袋の中にはパルミド地方で魔物からかっぱらったレザーマントと自分用の……つまり仕込み武器だらけで人には渡しづらいやつ……防寒具、それから予備の普通のコートを持っている。あと防寒具じゃないけどただの上着と正装の上着がある。
私自身はこの中では一番厚着してるから要らないし。それでも当然寒いけど、まぁそこは厚着してるからね、他の人を優先しよう。これがあればビュービュー吹き荒ぶ風にも勝てるよね!
「陛下、こちらを」
陛下にコートをお渡しし、清潔で大判のスカーフを姫様の首元にお巻きする。ないよりはマシだろうと思って。ククールにレザーマント、ゼシカに正装の上着、ヤンガスに上着、エルトには……渡せないと思ってたけど渡さないのも問題だからできる限り武装をとっぱらった私の上着を渡す。
まだ残ってるから変な動きして刺さらないようにね?え、何さ。普段変態的な動きして前後の魔物を同時撃破してるのは私だって?戦闘能力が高いって言ってよね。
これでちょっとはいいんじゃない?あ、そうそう、私は服の下に手甲やら腕あてやらしてるから上着はかなりの大きめサイズ。だからヤンガスでも腕、通ると思う。ぴったりの服なんて着てたらさ、動いたら筋肉の動きが激しすぎてびりっとやっちゃうからね。
本当はちょっぴりククールみたいな騎士らしい服も着てみたいけど、あぁいう服は腕と太もも辺りを盛大に裂きそうだよ……。タイツなら大丈夫かな?
「ありがとうトウカ」
ゼシカの笑顔が眩しい。だろうね、ゼシカの薄着はもう、見ていられなかったもの。リブルアーチで魔法のビキニなんていう魔法のダメージを抑えられる装備を買わなくて本当に良かった。
にしてもさ、肩丸出しは凍てつくとかいうレベルじゃないはず。ただその、その胸が私が些か寂しいばっかりに腕とか丈とかは大丈夫なのにボタンがはち切れそうなのは勘弁して欲しい……。窮屈そうだけど私のなけなしのプライドめいた何かが粉砕されたから許して欲しい……。
なんて、少し寒さを和らげつつ襲い来る魔物達をいなしつつ進んでいた。そこそこ和やかな雰囲気だよ。これで寒かったら誰かがイライラすると思うし、雰囲気だって険悪、だろう……ッ?
雪の世界で沸いてくる如く襲い来る魔物の数は相変わらず前みたいに多くはなく、ただ一体一体が強いという感じだった。だからかな、私達は聖水によって陛下と姫が魔物から認識されづらくなるようにして、何とか倒すことに集中してしまったんだ。
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