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おぢばにおかえり
第三十三話 明治の中でその十

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「というか私そんな似合う服ないわよ」
「町娘?ちっちだと」
「もうそのものよね」
「あと巫女さんとかね」
「宗教違うけれど」
「あっ、先輩でしたら」
 皆が言っていると阿波野君がこんなことを言いました。
「お姫様ですよ」
「えっ!?」
 思わず声をあげてしまいました。
 そしてです、すぐに阿波野君に聞きました。
「今何て言ったのよ」
「ですからお姫様ですよ」
「そんな筈ないでしょ」
 お顔を真っ赤にさせて阿波野君に言いました。
「私がお姫様って」
「けれどそうですよ」
「何でそうなるのよ」
「僕としては」
「そんな筈ないじゃない」 
 ムキになって反論しました。
「私がそんなのって」
「何か違います?」
「違うわよ、どうしてお姫様よ」
「ですから僕から見たらですよ」
「私はお姫様なの」
「はい、そうです」
 また言うのでした。
「ですから着られるならです」
「お姫様?」
「はい、どうですか?」
「いいわよ、別に」
 私は眉を曇らせて答えました。
「そうした服は」
「じゃあどんな服がいいですか?」
「そう言われたら」
 少し考えてからです、私は阿波野君に答えました。
「町娘とか村娘かしら」
「何か普通ですね」
「そんな派手なのは合わないから」
 私にです、ましてやお姫様なんてとてもです。
「いいわよ」
「そうですか」
「そう思うわ、自分のことは」 
 こう阿波野君に言いました、そして今度は私から阿波野君に聞きました。
「そういう阿波野君はどうなの?」
「僕ですか」
「ええ、どんな服を着たいのよ」
「浪人ですか」 
 この服がいいという返事でした。
「僕は」
「浪人?」
「はい、眠狂四郎みたいな」
「あの人浪人だったの」
「そうじゃないんですか?ハーフで」
「ハーフって」
 何か無茶苦茶言ってると思いました、正直に言いまして。
「江戸時代でしょ、眠狂四郎って」
「そうですけれど」
「長崎が舞台じゃないでしょ」
 あそこは出島があったのでそうした人がいたというのは聞いています。シーボルトさんの娘さんのいねさんみたいな人が。
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