第二十話 小さくなる身体その十二
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「今では一番有名な歌劇の一つかもね」
「そこまでの作品なんですね」
「そして蝶々さんもね」
岡島は銅像を見ながら優花に話す。
「そこまでのキャラクターだよ」
「そうなんですね」
「そうだよ、ただ」
「ただ?」
「この銅像見ていつも思うことがあるんだ」
「何ですか?」
「この銅像似ていないんだよね」
こんなことも言うのだった。
「どうにも」
「そうなんですか」
「うん、三浦環さんの写真を見たことがあるけれど」
その写真と比べてというのだ。
「この銅像よりふっくらとしているんだ」
「そうなんですか」
「この銅像は三浦さんというけれど」
それがというのだ。
「三浦さんというよりもね」
「蝶々さんですか」
「そちらの感じがするね」
蝶々さんの銅像と共にある子供の銅像も見て言う。
「僕はね」
「そうなんですね」
「それと蝶々さんは死ぬけれど」
物語の最期でだ、自害してしまうのだ。この場面も有名な場面だ。
「残された人達は辛いだろうね」
「お子さんが、ですね」
「いや、ご主人もね」
その軽薄でいい加減なピンカートン中尉もというのだ。もっとも作中では詳しく描かれていないが三年後の時は昇進していたかも知れない。
「自分のいい加減さが招いたことだからね」
「蝶々さんが死んだことは」
「子供は引き取ったけれど」
「その子供を見る度にですね」
「自分の罪を思い出すからね」
そうなってしまうからだというのだ。
「辛いと思うよ、奥さんもね」
「一緒に苦しむことになりますか」
「何かと蝶々さんを気遣っていた領事さんもね」
彼にしてもというのだ。
「辛いと思うよ」
「悲しい作品なんですね」
「うん、後のことも思うとね」
「お子さんどうなるんでしょう」
「その後のことを描いた作品があったかな」
「あっ、そうなんですか」
「そんな話を聞いたこともあるよ」
岡島は銅像を見続けつつ優花にこうしたことも話した。
「蝶々さんの子供のことを描いた作品もあるってね」
「お子さんは蝶々さんの死を背負って生きていくんですね」
「そうなるね」
「辛いですよね、誰よりも」
「そうしたことは中々抜けられないよ」
母の自殺、それはというのだ。
「その人生にも人格にもね」
「影を落とすんですね」
「トラウマになるね」
「トラウマって辛いですよね」
「君にもトラウマはあるね」
ここでだった、岡島は銅像から優花に顔を向けた。そのうえで彼に尋ねた。
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