巻ノ五十三 九州のことその二
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「飯の後はな」
「はい、鍛錬ですな」
「我等と共に」
「それに励まれますか」
「そうしようぞ、剣に馬にな」
それにだった。
「忍術も行おうぞ」
「ですな、我等馬にはあまり乗りませぬが」
「忍術ならばです」
「まさに手のもの」
忍の者故の言葉である。
「それならば」
「思う存分楽しめますな」
「そうじゃな、それで話は変わるが」
幸村は十勇士にこうも言った。
「九州のことじゃが」
「はい、いよいよですな」
「島津家が大友家の領地に攻め込んだのですな」
「左様ですな」
「あの五万の軍勢で岩屋城を攻めた」
彼等も見たあの城をというのだ。
「そしてな」
「岩屋城は陥ちましたか」
「あの城は小さな城ですし」
「あの五万の軍勢で攻められては」
「うむ、落城したそうじゃ」
実際にとだ、幸村も答えた。
「そうなったという、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「思いの他持ちこたえ城兵は城主である高橋紹運殿を含め皆ご自害か討ち死にされたとこのことであるが」
それでもというのだ。
「島津家の軍勢の一割を倒しな」
「一割もですか」
「そこまでですか」
「岩屋城で粘った」
「そこまで戦われたのですか」
「そうなったという、かなりの島津家の将兵を倒しただけでなく」
五万の兵の一割、即ちおよそ五千をだ。
「時も稼いだという」
「では」
「その時もあり、ですな」
「関白様の軍勢は間に合う」
「そうなりそうですか」
「おそらくな、その一割の損害を受け軍勢も疲れたからな」
幸村は今度は島津の軍勢の話もした。
「島津家は一時兵を退いたという」
「ではその間に」
「関白様の軍勢は九州に間に合う」
「そうなりますか」
「うむ」
その通りという返事だった。
「どうやらな」
「ですか、高橋殿の功ですな」
「ご自身が命を賭けられてそうされたのですな」
「命にかえて主家を守った」
「そうもされましたか」
「高橋殿は最後に自害されたという」
彼の死に様についてもだ、幸村は話した。
「ご自身も刀を抜かれ戦われてな」
「そしてそのうえで、ですが」
「ご自身も」
「うむ、死んだ者達を弔ったうえで腹を切られたという」
切腹、それを果たしたというのだ。
「そうされたという」
「ですか、お見事ですな」
「そうされたとは」
「いやまさに武士ですな」
「左様ですな」
「そうじゃな、拙者も思った」
幸村もというのだ、高橋の戦い様と生き様を聞いてだ。もっと言えば死に様を。
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