暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
種族の憂慮
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、どうしても疑念が胸をよぎる。

そもそも、アレはそんな単純な事件だったのだろうか。

あの当時、ケットシー上層部ではかなりピリピリした空気が流れていた。

それもこれも、ポッと出の新人(ニュービー)がこともあろうに竜騎士(ドラグーン)隊と対を成すような新たな軍を設立し、それとともに本人の実力の高さに嫉妬――――いやあれはもはや敵意が向けられていたのである。

現にアリシャ自身もフェンリル隊配備に尽力したということで、一時期彼女への執政部の評価は著しく下がっていたそうだ。

だが、そんな折にあの襲撃事件である。

あの一件でレンの評価、並びにフェンリル隊への当たりやアリシャの評価。その全てが軒並み上がったのだ。偶然にしては、いくらなんでもアリシャへプラスの要素が多すぎるような気がする。

だが、いくら領主と言えど他領の情報を抜き出すなど生半可なことでは不可能だ。それに、当時の彼女はALO有史初の種族連合の設立に大忙しだったはず。とてもそんな裏工作をするような手間暇は得られない。

だが、それでも。

どうしても、疑念は消えない。

無意識のうちに見つめていたヒスイの視線に気づいたアリシャだったが、返ってきたのは気の抜けるような屈託のない笑顔と無防備な小首を傾げる動作だった。

思わず笑みをこぼさずにはいられない領主の仕草を楽しみながら、ヒスイは疑念をコーヒーとともに押し戻してから「そういえば」と言った。

「アリシャちゃん、何でわざわざ《ここ》に来たん?執務塔からは結構離れとるし、自室のほうが近いやろ」

「そりゃレンくん目当て……あ、いや嘘ですゴメンナサイ」

仮にも一種族の陸軍副隊長に任命されるぐらいの速度で鼻先に突き付けられた短剣に、ちっこい領主は素直に両手を上げた。

短剣を引いたヒスイは、ケットシーの中でも珍しいキツネ耳にも似た大きめの耳を揺らしながら軽く鼻を鳴らす。

「第一、ウチの(ぼん)がいないことくらい、アンタ知っとったやろ」

何たって、ケットシー領が誇る究極の《個》だ。

プレイヤースキルの高い者の価値が高いのは、どこの種族でも同じである。そういうプレイヤーに限って、早々に自らの種族に見切りをつけるか嫌気がさすかのどちらかの理由で脱領者(レネゲイド)になるのだ。

貴重なまだ属領しているランカーの動向を、アリシャは領主として常時把握している義務がある。レン自身だって、それくらいは知っているだろう。

ネコミミ領主はぬぐっ、と言葉に詰まり、お茶を飲むことに逃げようとしたようだが、カップの中身は先刻飲み干したばかりだったようだ。

健康的に焼けた頬を膨らませながら、空のカップをソーサーごとこちらへ突き出す。

ヒスイは軽く肩をすくめ、卓上のポットを傾け
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