暁 〜小説投稿サイト〜
Blue Sea 『空と海の境界線』
Operation 01
出会い
Mission1「砕けた空」
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ことを、祈るばかりだ……っ)
 女は気配を感じると門の隅に隠れ、気配を完全に消す。

 門から感じる気配は1人の艦娘。女が数少ない人の中で知っている『最初の1人』がその艦娘。女には気づかず、門の近くでウロウロし始めた。女にとってその場を抜け出す最大のチャンスだ。

(今だ)
 女は俊敏に門の前から去り、小ささを生かして何とかその施設の外へ、そして艦娘に気づかれないように離脱した。その時に、元の姿に戻った。

 その女の容姿は、パーマが少しかかった後ろの長い髪、前や横の少し長めに整えているあたりポニーテールは似合わない。少し幼さが残ってるようにも思える顔立ちに少し明るめのブラウン。そして軍服姿ではなく、スーツに近い服を着て、下半身はタイツ。ヒールは履けないらしいが、そうでなくても十分美人と呼ばれるようであろう女――――――セレン・ヘイズは、施設を離れ、航空基地へと移動を始めていた。

 それは、「彼」に会うため。





 セレン・ヘイズが鎮守府を去ったのと同タイミングで鎮守府の敷地に入った艦娘。彼女は、本来であれば初期配属艦となる艦娘ではない。彼女はどんな存在かといえば、艦娘の出現と全く同タイミングで現れた、というのが正しいのだろうか。最初の5人と呼ばれた「吹雪・電・漣・五月雨・叢雲」の誰にも当てはまらない。そして、彼女の存在は隠され、存在しないことになっている。

 世間一般には知られていない存在だが、大本営の上層部や先ほどのセレン・ヘイズやキャロル・ドーリーなど、彼女の存在を知っているものも少なくはない。そして「彼」の記憶にも彼女はいる。最も、少しだけ生活を共にしたことがあるくらいだが。

 彼女は静かに、「彼」を待っている。


(大丈夫……今度こそ……きっと)




 彼女の願いは、せめて人としていられることを祈っていた。
 それは、艦娘を恐れ、兵器として扱う者でないことを祈っていた。






 彼、響がサンド島に着く頃の機内。
 まるで再び何もなかったように静寂を取り戻していたが、再びキャロルの一声によって響との話が再び始まる。

「深海棲艦との戦いは、命の奪い合いだと思いますか?」
 その言葉を聞いた響は小さな声で「命の……奪い合い……」と呟いた。

 彼はまだ14と幼い。それをこんな命の奪い合いの現場、しかも最前線に配属するのだから大本営も大概なのだが、実の処セレンの判断が故どうとも言えない。

 響はキャロルから聞かれた命の奪い合いのことを必死に頭の中で考えていた。
 響にとって命の奪い合いは残酷なものだった。そう、彼の頭の中で、いくつかの記憶が繰り返し思い出され、考えることもできなかった。それもまた艦娘が絡んでいる、奇妙なものだが。


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