一
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
いうこと。
胸いっぱいに六月の、夏に近いむわりとした空気を肺に取り込むと息を大きく吐き出す。
機嫌良く唄っていた及川が岩泉と繋いだ手をちょい、ちょい、と引くものだから岩泉は視線を及川に向ける。
「ん?」
柔く浸ったままに首を傾けた岩泉に及川が蕩けそうに笑って、家に着いたらお祝いしよーね。そう呟いた。
踏切が開く。デコボコしたレールの上を進んで超えて、岩泉が頷く。
「まだ、飲むのかよ」
「飲むよー、今日は岩ちゃん独り占めにしてないし」
その言葉にふは、岩泉が吹き出して。
「いつも独り占めじゃねぇか」
柔らかい及川の髪がふわり、風にそよぐと岩泉と同じ香りが漂う。二人の家の匂いが夜風に混ざる。
「でも、真ん中バースデーだからお祝いしないとでしょ?」
さも当然とばかりに云う及川にけらけら楽しげに声立てた岩泉がわーったよ、と絡む指をきゅっと握り直して古びたアパートの中に入っていく。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ