第三十四話 カトレアの家出
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ってトリステイン王子のことだよな?」
「他にそんな珍しい名前知らないぜ?」
カトレアの願いに毒気を抜かれた2人は、顔を向け合って、『どうしたものか』と考え込んだ。
元々、虚栄心の高いトリステイン貴族だ。『可憐な少女の願いには何とか応えてやらねば男の恥』……と思ってしまうのは悲しき習性かも知れない。
誘拐犯2人の後ろでは、2頭の狼が2人の頭を噛み砕くのを、今か今かと涎を垂らしながら待っている。
下手に断れば待っているのは無残な死だ。事ここにいたり、誘拐犯たちはカトレアの願いを受け入れることにした。
「わ、分かりました。ミス、貴女の願いを叶えましょう」
ちょっとキザな誘拐犯Aは怯えながらもキザったらしく言った。
「本当ですか!? ありがとうございます!」
ぽん、と手を合わせ、これ以上無い笑顔で喜びを表現した。
「かかっ……可憐だなぁ」
ちょっと気弱な誘拐犯Bは、可憐な少女に恋をした。
『婚約した男女は頻繁に会ってはならない』……なんて『しきたり』は、今のカトレアにとっては関係の無い事だった。
動物達の盛大な見送りを得て森を出た一行は、近くを歩いていた農夫に『マクシミリアンさまの所に行って来ます。ごめんなさい』と書かれた手紙をラ・ヴァリーエル公爵家の屋敷へ渡すように頼み、心付けに1スゥ銀貨数枚を渡した。
当然、その手紙を受け取ったラ・ヴァリーエル公爵家の面々は大騒ぎで追跡の部隊を送ったのは言うまでもない。
かくしてカトレアとその乗馬、誘拐犯2人とお目付け役の狼2頭の奇妙な旅が始まった。
☆ ☆ ☆
カトレア一行が、ラ・ヴァリエール公爵領の首府ユトレイトから進路を南に取り3日経った。
途中、2人の誘拐犯の為に馬を2頭買った。路銀は何かあったときの為に多少持っていたから問題なかった。
誘拐犯2人は、道中何度も逃げ出すチャンスが有ったがどういう訳か、カトレアに従順だった。彼らが何故逃げなかったというと、お目付け役の狼達に命を狙われている事もあるが、旅の途中で反乱軍の連戦連敗の噂を聞いているうちに、『身の振り方を改めるべき』、と思い立ったからだ。上手くカトレアに協力すれば、その功績で領地を取り戻せるかもしれない……といった打算も働いたが、元々お気楽な性格なのか、美少女のカトレアと旅をするのが楽しくてたまらない感じだった。
ラ・ヴァリエール公爵領を無事脱出して、初めて寄った宿場町で、マクシミリアンの居場所の情報収集をするとマクシミリアンはトリステイン東部の都市『リュエージュ』に駐屯している事が分かった。
「リュ
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