第三十四話 カトレアの家出
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、カトレアお嬢様。こんな所にお一人とは無用心ですな」
「フヒヒ……本当に居たな」
カトレアが振り返ると木陰から2人の男が現れた。一人はよれよれの服を着た貴族、もう一人も貴族で友好的とは言いがたい雰囲気だ。
「……貴方がたは?」
「我々は、貴女の婚約者の卑怯な不意打ちによって、領地を追われた者ですよ。早速ですが我々と付き合っていただきます」
「まぁ、私を人質にしようと?」
「その通り!」
「でも、わたしが居なくなるとみんなが困るから遠慮しておくわ」
「そう遠慮せずとも、みんな仲良くしてくれますよ?」
「でも、駄目よ。私に何かあったら貴方達が危険だわ」
「……どういう事だ?」
落ち武者ならぬ落ち貴族がカトレアに聞き返した。
「だ、旦那……」
「うるさいな、後にしろ」
「でも、旦那」
「何か後ろが……ヤバイ感じ」
「ああ〜ん?」
落ち貴族が後ろを振り返ると、鬱蒼とした暗い森の向こうから数百もの光る目がジッと落ち貴族達を見ていた。
「旦那、やっぱりマズイよ。逃げやしょう?」
「き、きき、気にしない! トリステイン貴族はうろたえない!」
徐々に光る目は近づきさらに数を増やした。
暗い森の先から見える数百の光の目は、まるで森その物が巨大な化け物の様に感じた。
怯える2人を目掛けて、森の中から2頭の巨大な狼が落ち貴族に襲い掛かった。
「ア、アッー!」
「ああっ、旦那!?」
『グワォォァーーーッ!』
「ひぃーーー!」
あわや、2体の惨殺死体が出来ると思われたが、カトレアが待ったをかけた。
「誘拐犯さん、こういう事言うと脅している様に思われるけど、私のお願い……聞いてくれないかしら?」
カトレアは申し訳なさそうに、落ち貴族改め誘拐犯に頼み事をした。
「い、命だけは……」
「ガウワウ!」
「ヒィィーーッ!」
「駄目よ。みんな、お願い言う事聞いて」
カトレアが誘拐犯の間に入る事で狼達は威嚇する事を止めた。
……
カトレアは元々思慮深い少女だ。
いつもなら森の中で一頻り泣いて、マクシミリアンへの気持ちを整理してから日常へと戻っていったが今回は違った。誘拐犯という非日常がやって来た事で上手く気持ちの整理がつかず、カトレア自身、思っても居なかった事を口走ってしまった。
カトレア曰く、
「わたしをマクシミリアンさまの所へ連れて行って」
口にした瞬間、『何て事を』と思ったが、不思議と後悔は無かった。それどころか、ダムが決壊するようにマクシミリアンへの気持ちが溢れ出て、自分自身を押さえ切れなかった。
「ええっ!? って、マクシミリアン
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