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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十話 嵐の前
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宇宙暦796年10月 8日 ハイネセン 統合作戦本部 ヤン・ウェンリー
「本部長は我々に彼らと協力しろと仰るのですね?」
「その通りだ、ボロディン提督」
ヨブ・トリューニヒト、ジョアン・レベロの二人は帰った後、私達は未だ応接室で話を続けている。
「貴官達がシャンタウ星域の敗戦でイゼルローン要塞へ戻るまでの間、私はグリーンヒル中将と何度も話した。何故こんなことになってしまったのか、二度とこのようなことを起さないためにはどうすれば良いか、をね」
本部長は椅子にゆったりと背を預けグリーンヒル中将に視線を向けながら答えた。グリーンヒル中将が微かに頷く。そんな二人を見ながらボロディン提督が尋ねた。
「グリーンヒル中将、貴官はイゼルローンで我々に言ったな、別な手段があると。それはこれの事なのか?」
イゼルローン要塞で交わされた言葉が頭の中でリフレインする。
〜軍人は政治には関わるべきではない、それは政治が軍を正しく使用するならばの話だと小官は思います。政治が軍を己の都合に合わせて利用しようとするならば軍はそれを防ぐために動かなければならないでしょう〜
〜軍は両刃の剣なのです。扱い方を間違えれば今回のような事態を引き起こす事、場合によっては己自身の身に降りかかる事も有るということを政府に認識してもらわなければ〜
〜一つの手段と言ったまでです、ビュコック提督。唯一の手段と言ったわけではありません。小官は軍事力で政府を自由に動かす事は下策だと考えています〜
「その通りです。先程の話で出たとおりクーデターは愚策でしょう。同盟市民の支持を一時的には得ることが出来るかもしれませんが長続きはしない。となれば残る手段は彼らが愚かな行動をしないように監視するしかありません」
「協力という名の監視か……。彼らに協力しろと言いますが、具体的には何を?」
ウランフ提督が周囲を見渡しながら尋ねる。
「彼らに正しい情報を伝えてくれ。そして彼らと密接に接してくれ」
シトレ本部長が答えた。納得がいかなかったのだろう。訝しげにウランフ提督が尋ねた。
「それだけですか?」
「そうだ。だがそれが大切なのだ。これから同盟は基本的にイゼルローン要塞を利用した防衛戦が主体となるだろう。積極的な軍事行動はできない」
皆、本部長の言葉に頷いた。確かに本部長の言うとおりだろう。今の同盟の戦力では帝国に攻め込むなど出来ない。但し戦場がイゼルローン方面に限定されるかは分からない……。
「分かるかね、軍人達が軍功を上げ昇進する機会は限りなく少なくなるということだ。つまり君達が軍の中枢部を占める時代が続く。そのことに不満を持つのが今再起を図っている主戦派だ」
本部長は苦い表情で言葉を続けた。
「彼らが貴官達を追い落とそう
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