第n+1話 煙の親離れ
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二会手 夏雄は花火を見に行ったことがある。それどころか、手持ち花火を行ったことすらある。
パチパチといった乾いた音の中で、いやそれ以外の何かも含めて、夏雄はまどろみの中で花火を連想しながら、体をゆっくりと起こ
「ストップ!」
さなかった。
冷静になればおかしな話だ。周りで仕切りに鳴る軽い破裂音が、花火である筈が無い。
そしてこの熱風に煽られる感じ。それも全身を。
全身……?
なにやら尋常でない事態を体が察するとほぼ同時に、何かビニールに包まれた人体のようなものに体を抱えられる。
冷静に軽く周囲を見回すと、辺り一面赤世界だった。
「っぅ!?」
夏雄は慌てて反射的に息を止めた。その瞬間に苦い臭いが鼻で渦巻く。
(燃えてる……!?)
ゴウゴウと火が自分の領地に胡座をかいている。火の形が燃えている物を想像させる。
「っ!」
夏雄は目への刺激から、思わず目を閉じた。
それから夏雄は頭を使いながらもただ雷に怯える子供のように縮こまって誰か何かの中にい続けた。
それから気づくと目を閉じてずっと、熱風の中も涼しい風の中も暗闇だけを真剣に感じていた。
「はい、もう大丈夫だよ」
夏雄がゆっくり目を開けるとほぼ同時にするりと人の高さから滑り落とされた。料理の工程のように夏雄は横向きにくるくると地面に転がり着地する。
夏雄はチクチクする目をゆっくりと無理せず開きながら、改めて平静を取り戻す。
とても、恥ずかしい。
勿論、火の脅威にそこらの人間は無力ではある。
だが、だからといって、大の高校生が自分を抱きしめるように震え上がっていたらそれは明らかに恥ずかしい光景である。
「えっと、ありがとうございます。ゴホッ、本当に」
転がった雰囲気から自分を助けてくれた人の方向を類推し少し目を開ける。
「うわ大丈夫か君?髪が真っ黒焦げだぞ?」
「えっと、これは地毛です」
万能翻訳機と万能翻訳マイクがまだ正常に動いてることを信じながら話を交わす。
「成る程。それで目が真っ黒なのは、火のせいなのかい?」
助けてくれた人はハハハと笑った。
「ははは、それも……地眼?ん、元からです」
「夏雄君!」
タタタと駆ける音と最早聞き慣れた声の方向に目を向けると、やはり侍乃公他 美都子だった。棒のついたアイスか何かを2つ持っている。
「喉が渇いてきた夏雄君に唐辛子アイスを1つ売りつけてあげようと思ったけど、喉に負担がかかるといけないから2つ共私が食べるね。とても美味しそうに」
というわけで唐辛子アイスを堪能している美都子は無視して、助けてくれた人に改めて日本の文化で頭を下げた。こういうのは精神でなんとかなる。
そんな辺りで耳障りな警告するような音と共に、い
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