精神の奥底
59 不機嫌な空
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リサは屋上のドアを開いた。
食堂で何度もコーヒーを注文し、ホールスタッフが「またか…」という顔をし始めた段階で、普段飲み慣れない飲み物を飲み過ぎたせいか、胃が痛み始めたので、場所を変えた。
未だに気持ちの整理がつかない。
しかし先程、伊集院炎山から言われたリミットは刻々と迫っている。
「はぁ…」
炎山を信用し、オフィシャルに協力すれば、現状自分が1人でアクションを起こすよりは遥かに高い確率でマヤとヨイリーは開放され、シドウに対する疑いも晴れるだろう。
しかし、失敗したら…ということを考えてしまう。
木場が自分だけでなく、マヤとヨイリーに何をするかが分からない。
そして仮にうまくいったとしても、オフィシャルというある種の敵に加担したということは当然、バれる。
そうなれば、他の隊員たちから疑惑の目を向けられ、自分とマヤの唯一の依代であるサテラポリスを出ざるを得なくなるかもしれない。
下手をすれば、何らかの罪に問われる可能性もある。
「どっちにコケても、アウト…はぁ…胃…痛い」
ベンチに腰掛け、グタリと横になる。
何もかも嫌になりかけていた。
不思議と死ぬわけでもないのに、走馬灯が遠目に見えてくる。
「……空」
昔のことが一通り流れていった後、不意に遠目に見ていた空が頭に入ってきた。
今日は少し雲が多いようだが、相変わらずの夏日だ。
リサはまだ世の中のことを多くは知らない子供だが、地球は丸いということを知った時から、時折考えることがあった。
それは地球上の誰もが同じ空の下で同じ空気を吸って生きているという、当たり前でしょうもないことだった。
しかし同時に同じ空、同じ空気を共有することができても、価値観や文化を分かち合うことが出来ず、今日もどこかで争いが起こるということへの憤りでもあった。
「………」
そもそもこんなことを考えるようになったのは、ある人物と離れ離れになるという出来事がキッカケだった。
遠くに行ってしまっても、決して別の惑星に行くわけでも、この世から去るわけではない。
いつも同じ空の下で繋がっていると思いたかったからだった。
それを思い出した時、気づけば手に私物のAQUOSが握られていた。
WAXAの中では、情報漏えいのリスクから私物の端末の使用は基本的に禁じられているが、その規則も完全に忘れていた。
一応、誰も見ていないのを確認すると、電話帳から「発信」をタップした。
答えが見つかるかどうかは分からないし、久しぶりの会話で感極まって泣いてしまって話にならないかもしれない。
それ以前に今もこの番号を使っているかも定かではない。
不安を抱えたまま、耳に端末をあてた。
同時刻、星河スバルも
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