ヘルズインフェルノ
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を伸ばしても届かない場所に逝っちゃう……あの喪失感をまた味わうのは、耐えられないほど怖いんだ……!!」
「喪失感……私も同じ経験があるからその気持ちはよくわかる。けど、その喪失感に対する恐怖心はかなり危うい。恐怖は怒り、怒りは憎しみ、憎しみは苦痛となり、いつしか暗黒に染まる。その恐怖心、早めに克服しないといつか選択を誤って全てを失うよ? ……さて、フェイトができないなら私がやるから、そこをどいて」
「ッ……!」
しかしマキナの説得を受けても、フェイトは頑なに譲ろうとしなかった。マキナが右へ動けばフェイトも右に、左へ動けば左にずれてその身を盾にしていた。
「意固地になるのも限度があるよ。フェイトは今、アンデッド一体と引き換えにこの世界全ての命を危険にさらしている。それがわかっていながら、本気でそいつを助けるつもり?」
「つもりじゃない、絶対に助けてみせる……!」
「だから無理だって言ってるのに……。そこまでしてリニスに永遠の苦しみを味あわせたいの?」
「……!」
マキナの言う通り、自分のやっている事は結果的にそうなるため、フェイトは返答できず言いよどむ。そんな彼女の戸惑う姿にマキナは呆れて頭に手を当て、
「そこまでこだわるなら、この注射器は“落として”あげる」
手に持っていた注射器を地面に置き、後ろを向いた。謎の行動に疑問を感じながらフェイトはその注射器を拾おうとしたその時、背中越しにマキナが言う。
「だけど覚悟して。どんな事になっても私は一切の責任を負わない、それは“誰かさん”が勝手に使うんだから。そして思い知るといい、こんなはずではない結果を」
「…………」
フェイトは黙って注射器を拾い上げた。この注射器を使う事の意味は既に説明されている、それを承知で使うなら自己責任だと言ってきているのだ。
その時、唐突に野太い男の声が聞こえてきた。
「あまり彼女を追い詰めてやるな、闇の書の先代主の娘よ?」
意図しない第三者の登場で彼女達は一旦対峙を止めて、その声の方向へ警戒を向ける。暗闇に包まれた石畳の道を、靴音を立てながら歩いて来たのは頬に傷がある厳つい顔つきの大男……ガタイの良い体格に無理やり局員の制服を着ているせいで、制服のシャツが破れそうなぐらいパッツンパッツンであった。
「そいつにはまだ利用価値がある、傷物にされては困るのだよ」
「な、ドーラ司令官!? なぜあなたがここに……!」
「御苦労だった、テスタロッサ特務捜査官。おかげでそこの女狐を狩りとれる」
「え? 狩り……??」
「なるほど……もたもたし過ぎて死神が現れたか。しかし生憎だけど、大人しく狩られるつもりはない。まぁ、イモータルのご登場とは少し想定外だったけど」
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