第九話 若過ぎる死その十
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しかしその認識のうえからだ、彼等は異端審問を認めているのだ。
「異端を狩り出す漁師と猟犬達です」
「実によい者達です」
「ならばですね」
「このことは」
「そうです、ですから」
それでとだ、また言った司教だった。
「彼等とも手を結びましょう」
「帝国、ロートリンゲン家の考えとは違いますが」
「我等は我等」
「それで、ですね」
「そうしていきますね」
「その通りです、マイラ様が女王になられれば」
その時こそという口調だった。
「この国の正しい姿が取り戻される時です」
「旧教の国に戻る」
「まさにその時ですね」
「だからこそですね」
「マイラ様を」
「その通りです、全てはあの方の為に」
自分達の主であるマイラ、彼女の為にというのだ。
「ロートリンゲン家、異端審問と結んでいきましょう」
「では、ただ」
ここで同志の一人が司教に言った。
「王国はどうやらです」
「周辺諸国だけでなく我が国にもですね」
「はい、触手を伸ばしている様ですが」
「知っています」
即座にだ、司教はその同志に答えた。
「私も」
「そうなのですか」
「はい、だからですね」
「彼等の手は」
「全て切ります」
一言での返事だった。
「無論」
「やはりそうされますか」
「王国は敵です」
海、海峡を挟んで対峙して久しいこの国から見て南東にあるこの国はというのだ。
「我々にとっては」
「それこそ数百年来のですね」
「まさにです」
それ故にというにだ。
「私も彼等に気付いていますし」
「そしてですね」
「王国の手は全て切り」
「その毒を受けた者達も」
「やはりですね」
「同じです」
切るというのだ。
「そうしていきましょう」
「それでは」
「如何に旧教といえど王国は敵です」
司教もこう考えていた、それは信仰とは別のことだというのだ。
「我が国の大陸の領地は全て奪われていますし」
「そうなって既に久しいですね」
「何度も戦ってきています」
「そうした相手だからこそ」
「我々はです」
何としてもという言葉だった。
「彼等にも妥協してはなりません」
「新教と王国」
「双方にですね」
「そうです、王国派に対しても」
断固としてとだ、司教は同志達に語った。
「妥協せずにいきましょう」
「全てはこの国の為に」
「神の為に」
「一切の妥協、躊躇を廃し」
「政を行っていきましょう」
同志達はこう言い合いそしてだった。
水を飲んだ、司教は同志達と同時に飲んだその水についてこう言った。
「教会の水です」
「聖水ですね」
「我等が今飲んだのはそれですね」
「そうです、聖水を飲めば」
それでという言葉だった。
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