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Three Roses
第九話 若過ぎる死その九
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「ロートリンゲン家の方々の動きも隠せます」
「余計にですね」
「ただ覆いをするだけでなく」
「それもですね」
「よいことですね」
「そうです、ですから」
 それだけにというのだ。
「お二方の為に動きましょう、ただ」
「はい、ただですね」
「ロートリンゲン家は異端審問とは距離を置いています」
「領内に新教徒もいます」
「帝国の国教は旧教ですが」
 このことはこの国とは裏返しだ、帝国は皇帝が即位の時には法皇庁に赴きそこで法皇の前に跪き帝冠を授けられる。旧教の守護者としてだ。
「国内には新教徒もいて」
「彼等にも一定の配慮が必要ですね」
「どうしても」
「その為彼等を無闇に狩り出す異端審問とは距離を置いています」
「法皇庁とも表面上は陰陽一体ですが」
 月と太陽だ、かつての法皇の一人が皇帝が月で法皇が太陽だと言っている。その時からの言葉である。
「しかし」
「実は違いますね」
「帝国は帝国で動いています」
「法皇庁とは違う動きを観せています」
「あの国は」
「そして魔女狩りについてもです」
 異端審問のもう一つの仕事だ、新教徒だけでなく異端とみなされる異教や魔女と思われる者も狩り出し裁判と拷問にかけて処刑しているのだ。
「黙っていますが止めています」
「協力しようとしていません」
「無闇に民を傷つけると考えてです」
「そうしています」
「そうです、そこが違います」
 法皇庁と帝国はというのだ、そして。
「我々とも」
「魔女もです」
「何としてもですね」
「狩り出さねばなりません」
「異端もですが」
「魔女もまた」
「魔女等と新教徒は同じです」 
 彼等にしてみればとだ、司教は言った。
「全て異端です」
「だからですね」
「我々としてはです」
「そこはマイラ様にもお話して」
「そしてですね」
「手を打っていく」
「我々もまた」
「そうしていきましょう、異端審問ともです」
 その彼等ともというのだ。
「手を結んでいますが」
「これからもですね」
「そうです、この国を旧教の国に戻すのです」
 マイラは確かな声でだ、同志達に述べた。
「その理想は忘れていませんね」
「無論です」
「だからこそ我々もここにいます」
「貴方と共に」
「正しき神の僕として」
「そうですね、神の教えは唯一つ」 
 まさにその一つこそなのだ。
「旧教なのです」
「間違っても新教ではないですね」
「それは違いますね」
「新教も異端です」
「これまでの異端と同じく」
「そうです、異端は我が国にあってはなりません」
 断じてとだ、司教は同志達にまた言った。
「何があろうとも」
「大司教の言われる通りです」
「ならば異端審問は我等の同志です」
「彼等はあらゆる異端を許し
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