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Three Roses
第九話 若過ぎる死その七

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「我が妃が女王になればいいのだ」
「マイラ様がですね」
「そうなればいいので」
「だからですね」
「あの方を遠ざけておく」
「それがいいですか」
「何といっても」
「そうだ、マリー王女がその時にこの国にいなければいい」
 太子は側近達に穏やかだがそこには確かなものを含んだ声で言った。それこそが太子の考えを表しているだろうかとだ、側近達は思った。
「そうであればだ」
「お妃様が女王となられる」
「若し大公が遺言を残されてもですね」
「我々が大公の周りを固めていれば」
「何とでもなりますね」
「事実は曲げられる」
 太子の今の言葉は淡々としていた。
「大公は何を言ってもだ」
「それでもですね」
「我々がそのお話を聞けば」
「その時はですね」
「遺言も何とかなる」
「そういうことですね」
「そうだ、我々に都合の悪い事実ならばだ」
 それならばと言うのだった。
「曲げるべきだ」
「それが政治だから」
「だからこそですね」
「ここは事実を捻じ曲げ」
「我々の事実としますか」
「そうする、では今から何かと動くとしよう」
 大公は側近達に言って実際にだった、陰からこの国を自分達即ちロートリンゲン家のものにしようと動いていた。
 その動きは司教は気付いた、だが彼は己の同志達に小さな声で囁いた。
「このことはご内密に」
「はい、誰にも言わずですね」
「見て見ぬふりをする」
「そうされるのですね」
「このことは」
「そうです、我々即ちマイラ様の為になります」
 そうした動きだからというのだ、太子のそれは。
「出来るだけ王、そして大公にもです」
「気付かれない様にですね」
「むしろ隠すべきですね」
「あの方の動きを」
「それを」
「そうです」
 こう言うのだった。
「むしろ」
「わかりました、それでは」
「ここはそうしましょう」
「この事実隠しましょう」
「我々で」
「大公は大層目のいい方ですが」
 この場合は察しがいいということだ、実際に大公は政治のうえでは察しがよく国のあらゆる問題にすぐに気付いて対応を取る人物だ。
 しかしだ、司教はその大公のことをさらに言うのだった。
「ですが森の中の木の枝には気付かれるかといいますと」
「そこまではですね」
「あの方も至りませんね」
「流石に」
「その枝に実が着いていても」 
 即ちわかりやすくとも、というのだ。
「気付かれないです」
「森の中に実があるのもまた当然」
「それがその森の中にないものでも」
「それでもですね」
「流石のあの方も気付かれない」
「左様ですね」
「そうです、我々は太子の木の枝をです」
 即ち動きをというのだ。
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