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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十九話 挙国一致への道
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ったと小官は思います」
ウランフ提督が私を援護した。だがトリューニヒトは首を横に振って言葉を続けた。
「ウランフ提督、私が問題にしているのはヤン提督が全てを理解した上でイゼルローン要塞を落としたのかということだ」
「?」
全てを理解した上で? どういうことだ? 何を言っている。思わず周囲を見渡した。皆不思議そうな顔をしている。トリューニヒト、一体何が言いたい。
「ヤン提督、君はイゼルローン要塞を攻略した時点で帝国との間に和平が結べると考えたかね?」
「……考えました。和平が無理でも防御に徹すれば国力の回復は可能だと考えました」
トリューニヒトは私の言葉を聞き終わると苦笑しながら口を開いた。
「やはりそうか。君は分かっていない」
「?」
分かっていない? 一体何のことだ? 私の疑問に答えるようにトリューニヒトは話し始めた。
「君はイゼルローン要塞攻略時点で和平が可能だと考えた。だが私はあの時点では不可能だと思った。せめて味方が二個艦隊ほども損害を受けてくれれば話は別だが……」
「……損害が少なかったとお考えですか?」
「違う、損害などどうでも良い事だ。大事なのは君が同盟市民を分かっていない事なのだよ、ヤン提督」
「!」
同盟市民? 何を言っている? 馬鹿にしているのかと思ったがトリューニヒトの表情はいたって真面目だ。そして哀れむような口調で言葉を続けた。
「ヤン提督、同盟市民は銀河帝国を憎んでいるのだ。君はそれが分かっていない」
「!」
「いいかね、この国では毎年百万から二百万人が戦死している。どこの小学校、中学校でも戦争の度に家族を亡くした子供が生まれる。彼らはその悲しみに堪えながら生きる。そして周囲はそんな彼らを支えながら学生生活を送るのだ」
「……」
「分かるかね。この国の学生たちは帝国への憎悪を胸に生きるのだ。人生の一番多感な時期に帝国への憎悪を植えつけられる。和平論など簡単に出るものではないのだよ」
「!」
「君の事は調べさせてもらった。五歳から十六歳まで宇宙船で暮らしている。つまり君は学生生活を経験していない。だから帝国への憎悪がない。同盟市民が分からないとはそういう意味だ。それと他者とのコミュニケーションを積極的に取るのが下手だ、おそらくは宇宙船という閉じられた世界で過ごした所為だろう」
「……」
「軍事的に見ればあの遠征は馬鹿げていただろう。しかし、市民感情の面から見れば当然の行為だったのだ。だから同盟市民はあの遠征を支持した。君には理解できなかった事だろうが……」
「……」
「君はイゼルローン要塞攻略後、和平論をマスコミに話すべきだったのだ。エル・ファシル、ティアマト、イゼルローンの英雄が、誰よりも帝国と戦って勝利を収めた男が和平論
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