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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十九話 挙国一致への道
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い。宇宙は専制国家で有る帝国と独裁国家である同盟の間で覇権を争う事になるだろう」
「……」
「今同盟が帝国と戦うのは、民主主義が標榜する基本的人権、人間の自由、平等を守るためだ。それを大義として同盟市民は戦っている。だがその大義が失われれば、何のために戦うのだ?」
レベロ委員長が問いかけてきたが、誰も答えることが出来ない。私もだ。何のために戦うのか?同盟市民は深刻な問題に直面するだろう。市民の一人一人がそれを問い直す事になるに違いない……。ビュコック提督、ボロディン提督、ウランフ提督も沈痛な面持ちをしている。
「私達の心配は杞憂なのかもしれない。しかし、そのような事態を招いてはならん。だからあえてドーソンを選んだのだ。決して権力欲や自己の勢力拡大のためではない。そんなことが許されるほど同盟は余裕を持っていない!」
吐き捨てるようなレベロ委員長の口調だった。トリューニヒトがレベロ委員長の肩に手をかける。レベロ委員長は邪険に手を払うと決まり悪そうに顔を背けた。微かに苦笑してトリューニヒトが話し始める。
「あの時は帝国が攻勢を強めるとは思わなかった。それならドーソンの方が適任だろうと思ったのだ。前任者のロボス大将はどうにも戦争好きだった。シトレ本部長に対する競争意識もあったのだろう」
確かにそうだった。能力も自信もあったロボス大将は自分が軍人として最高の地位に上がれない事が我慢できなかった。統合作戦本部長、元帥……。それに宇宙艦隊司令部の主戦派が同調した。
「あれに比べれば戦争に自信の無いドーソンの方が兵を動かすのに慎重でコントロールもし易いと判断したのだよ」
「ですが結局はそれに失敗し、あの遠征が起きた。そうですね?」
「残念だがその通りだ、ヤン提督」
トリューニヒトが認めた……。
「それなのに責任も取らず議長に就任ですか?」
自分でも嫌な言い方をしていると思うが、どうにも止まらない。こんな男が議長など納得がいかない。一千万人死んでいる、その責任も取らずに議長就任など認められない。
「その通りだ、ヤン提督。どれほど非難されても構わない。議長を辞退するつもりは無い。今の同盟には私が必要だ」
「!」
トリューニヒトは開き直るかのように言うと、私を見て笑いかけた。
「ヤン中将、いや大将。君は私が嫌いなようだね、私が責任も取らずに議長につくのが納得行かないようだが、あの遠征が私の所為で起きたと考えているのかな?」
「責任が全くないとは言えないと思います」
「確かにそうかもしれない。だがそれは君も同じではないかね」
「……」
「トリューニヒト議長、ヤン提督がイゼルローン要塞を攻略したことを言っているのであればそれは酷では有りませんか? あれは帝国の侵攻を防ぐため止むを得ない事であ
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