第63話 それぞれの旅立ち 前編
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龍馬と沖田は天草が去った方向を見つめていた。
「なぁ、沖田君。これからどうずるね?」
龍馬は沖田を見つめることなく言った。
「そうですね、とりあえずは土方さんか近藤さんに会いたいと思っています」
沖田は近藤が死んだことを知らさせれてはいなかった。そして、蘇り怪物になったことも。
「そうか。で、会った後はどうするね?」
龍馬は沖田が出す答えをおおよそわかってはいたが、敢えて聞いてみることにした。
「勿論、剣を交えます」
沖田は未だ全裸のままだったが、にやりと笑った。
「じゃあ、沖田君。わしとはやらないのかい?」
龍馬もまた挑発的に笑ってみせた。
「ふふふ。龍馬さん、今、やる気はないのでしょ?」
沖田は子供の笑顔で龍馬の挑発をかわした。
「ですが、土方さんか近藤さんとやりあったのち、機会があれば相まみえましょう」
沖田は龍馬をみつめた。
「ところで、沖田君。土方君か近藤君と剣を交えたいというが、どうするつもりぜよ?」
龍馬は率直な疑問を沖田に投げかけた。
「そうですね。とりあえずは、そこで呆けている西郷さんにお世話になりたいと思っている所存です」
(なるほど、その手があったか)
沖田の考えに龍馬は納得した。その方が、確かに手取り早い。何故なら、近藤はいざ知らず、土方は新政府軍には付くことはないだろうから。
「と、沖田君はいっているが、どうするね、西郷さん?」
龍馬は信じられない物を見せられて呆然としている西郷に話しかけた。が、西郷の目は別の物を捉えていた。
それは沖田が切り落とした天草の指であった。
「あ、あぁ、沖田君がわれらの味方に付いてくれれば百人力でごわすな」
西郷は大声で笑ってみせた。
「決まりじゃの、沖田君」
龍馬もまた笑った。
「西郷さん、龍馬さん、勘違いしてもらっては困る。私は新政府軍につくとは言ってはいない。私はあくまでも新撰組の沖田総司。それ以上でも以下でもない」
沖田は西郷と龍馬を睨むように見つめた。
「ちゃぁちゃぁちゃぁ。それは厳しいのぉ、西郷さん」
龍馬は大声で笑った。
「ところで、龍馬さん。あなたはどうするつもりなのですか?」
沖田は大声で笑う龍馬を見つめて聴いた。
「わしかぁ。そうじゃのぉ。とりあえず、九州に一度戻ろうとおもちゅる」
龍馬は雨の空を見つめて言った。
「九州へ?何をしに?」
沖田は不思議そうに首をかしげていった。
「まぁ、それは内緒じゃ」
龍馬はにこりと微笑んだ。
「そうですか。では、お互い生きていたら今度こそまみえましょう」
「そうじゃの。生きていたというのは変な表現じゃが、また逢えたら死合おう」
沖田と龍馬はお互いの顔を見合わせてにやりと笑った。
その二人を尻目に西郷は、そっと天草の指を懐に
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