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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン53 鉄砲水と黒騎士の刃
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ゾンビが入ってきたら、一瞬で大惨事になることは間違いないだろう。

「あーもう……行くよ、チャクチャルさん」
『推奨はしないぞ?マスターの体が本調子でないことは明らかだし、私としてはむしろあの下の人間を囮にマスターに逃げてもらいたい』
「……チャクチャルさんってさ、たまにびっくりすることさらっと言うよね」
『私は人間ではないからな。マスター以外は割とどうでもいい。それに、有象無象が10人いるよりマスター1人いるほうがよほどマシだからな』
「さいですか、愛が重いよまったく」

 ここもまた、僕とチャクチャルさんの間にある相容れないことのひとつなんだろう。今のところは静観するようだけど、表だって協力してくれるわけではないらしい。まあ、それでも構わない。
 そっと体育館を抜け出し、後ろ手にドアを閉める。サッカーを精霊体のまま壁抜けさせて鍵を中から掛け直してもらい、もしみんなが先に帰ってきたときに最低限の説明だけはしてもらえるようにそのまま残しておいた。改めて周りに他のゾンビがいないことを確認し、翔と万丈目が向かっていった方へ足音を忍ばせながら移動する。ふらふらと歩いているだけの2人の背中はすぐに見つかり……その瞬間、後ろから肩を叩かれた。この学校に今いる中で、こういうことをしてきそうな心当たりは1人しかいない。

「や、葵ちゃん。もう体調はいいの?」
「先輩にばかり任せて私が寝ているだなんて、クラディー家の名が泣きますから。ですがまあ、無駄話はまたの機会にしましょう。私がどちらか片方を引きつけますから、先輩は残った方をお願いします」

 言うが早いが、僕の肩越しに何か白いものを投げる葵ちゃん。弧を描いて地面に激突したそれは、中から色い煙をまき散らし……煙玉とは、また忍者らしいチョイスをしたものだ。

「おいでなさい。デュエルがしたいのでしたら、私が相手になりましょう!」

 わざと足音を大きく立てつつ、葵ちゃんが遠ざかっていく音がする。若干何が起きたのかわかっていなかった前の2人も今の声で我に返ったらしく、ゆっくりとした足取りで葵ちゃんの走っていった方へルートを変える。
 よし、今だ。考えるより先に体が動いていた。大きく足を上げ、ドスンと足音を立てる……ただそれだけの動きで、2人のゾンビがゆっくりとこちらを向き直る。

「へい、お2人さん?」
「よーう、清明。俺とデュエル、しようぜぇ〜」
「いやいや万丈目君、ここは僕が昨日のリベンジするのが先ッスよ」
「万丈目サンダー。なあ清明、お前も俺とデュエルしたいよなあ?」

 正直言って、どっちでも知ったこっちゃない。僕がしたいのは、こいつらをこの場から引き離すことだけだ。

「じゃんけんでもすれば?」
「ならそうするかー……じゃん、けん」
「「ぽん!」」


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