巻ノ五十二 島津四兄弟その七
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「敵同士ですな」
「また九州に来れば」
その時はとだ、幸村は義弘に応えた。
「そうなるでしょうな」
「はい、その時は」
歳久が言う。
「お互いに悔いのない様に」
「戦いましょう」
「ではその時を楽しみにもして」
家久が言うことはというと。
「今はお別れとしましょう」
「さすれば」
幸村は四兄弟にも応えた、そしてだった。
主従は四兄弟と別れ深々と頭を下げ。
まだ暗いうちに気配を消して島津家の陣から出てだった。それから。
そのまま山に入りだ、まずは休み。
そしてだ、朝食を食べて出発したが。
幸村は山道を進みつつだ、十勇士達に言った。
「いや、四兄弟の方々は」
「はい、どなたもですな」
「非常に素晴らしい方々です」
「器が大きく」
「武士としてのお心も備えた」
「そうであるな、敵となるのが」
これからのことを考えてだ、幸村は言うのだった。
「惜しいな」
「左様ですな」
「敵同士となることが」
「どうにもです」
「残念です」
「全くだ」
また言った幸村だった、それも残念そうに。
「戦にならねければよいが」
「しかしです」
「四兄弟の方々のお話を聞きますと」
「どうしてもです」
「戦いは避けられませぬな」
「うむ、戦になる」
間違いなくとだ、幸村も言う。
「これはな」
「やはりそうですな」
「戦になりますな」
「島津家と関白様は」
「どうしても」
「ならぬ筈がない」
絶対にとだ、幸村はまた言った。
「若し島津家が九州を統一する」
「関白様はそれを許されませぬな」
「何があろうとも」
「それはです」
「あの方は」
「島津家を九州に与えられることは」
「それでは島津家の力が大きくなり過ぎる」
九州全てを手に入れてはというのだ。
「力が大きくなり過ぎる大名家はあってはならぬ」
「天下統一の折には」
「断じてですな」
「許されぬ」
「そういうことですな」
「そうじゃ、しかし島津家の歴史は古い」
それも非常にだ。
「島津家は数百年の間薩摩を預かっている」
「それだけ古い家となりますと」
「到底ですな」
「滅ぼせませぬな」
「名家であるが故に」
「とても」
「関白様は最初からそのおつもりはない」
幸村はそのことはわかっていた、秀吉に島津家を滅ぼすつもりがないことはだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「三国だけにですな」
「守護を留め」
「九州の統一は許さない」
「それだけは」
「今島津家は肥前や肥後等も領有しているが」
しかしというのだ。
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